【登録初月無料】8/31まで新規登録でAmazonギフト券が当たる!  今すぐチェックする

6月の巻頭小説

『 眼帯の下 』

藤沢周

藤沢周・連作小説館①


「眼帯の下」は、気鋭の作家、藤沢周がWeb新小説に初めて寄稿した書き下ろし短編小説だ。作家本人とおぼしき主人公が、コロナ禍に故郷の新潟を訪ねる私小説風の佳作である。物語は、主人公の幼い頃の「過去」と感染症がはびこる「現在」が交錯する。

「記憶は何十年も経ってから、刃を向けてくることもあるが、優しい陽だまりを見せてくれることもある」と語る著者。人間にとって記憶の本質を問いかける読切りの四〇枚である。


眼帯の下

藤沢周

もう白鳥もシベリアに帰ったのであろう。

茫漠とした田んぼを眺めているうちに、わだかまったように固まっている何軒かの民家や、幾重にも並んだ大型ビニールハウス、銀食器工場などが車窓のむこうをよぎり始める。昨年の冬に入りかけた頃は、冷え枯れた田んぼのあちこちに白い点々とした群れが、土の中をついばんでいたのが見えたものだが、三月の中旬ともなって、北の国へと飛び立ってしまったのだろう。

まもなく到着するという新幹線の車内のアナウンスに、左の眼帯の位置を確かめると、マスクの紐との重なりが耳の付け根に痛くて、小さく舌打ちする。まばらな乗客が棚の荷物を取ったり、デッキの洗面所に向かったりと動き出すのを感じながら、自分もコートの袖に腕を通し、マスクをさらにしっかりと鼻柱に押しつけた。

「昼、エキナカで、へぎ蕎麦にしますか。それとも、古町ふるまちか駅南の……」

「なんか、俺ら、いかにも東京から出張で来ましたー、って感じだよなあ」

「っすよねえ」

若いサラリーマン二人組の会話を耳にして、マスクの内で唇の片端を上げる。

新潟駅ホームにゆっくりと入った新幹線からは、在来線のホームが見えたが、そこにいる人々にとっては

ここから先をお読みいただくには
会員登録が必要です。

最新号のコンテンツ

連載 書き下ろし連作小説 (2021年6月号)

眼帯の下

本誌初の本格的小説。物語の炎は揺らめき、記憶の本質を解き明かす

連載 対話型インタビュー (2021年6月号)

比呂美の庭

注目の対話型インタビュー連載開始。詩人は如何に〆切を突破するのか

伊藤比呂美

連載 連載詩 (2021年6月号)

最少の言葉で詩作する試み

雨が降っている。紫陽花が生きているように、言葉も私も生きている

谷川俊太郎

連載 連載詩 (2021年6月号)

週末のアルペジオ

くちなしの香りにいざなわれて、よみがえる儚く甘い記憶、音、名前

三角みづ紀

連載 動画 (2021年6月号)

オンライン対談 谷川俊太郎×俵万智

最終回は俵さんへ伝説の「33の質問」登場。絶対見逃せない充実の60分

谷川俊太郎×俵万智

連載 エッセイ (2021年6月号)

寺子屋山頭火

祈りと救いをめぐる葛藤。堂守になったが、依然くすぶる山頭火の惑い

連載 イラスト評伝 (2021年6月号)

エピソードで知る種田山頭火

山頭火の人生の一大転換点となった出家。耕畝と改名し修行に励むが

春陽堂書店編集部

連載 動画 (2021年6月号)

待ってました! 黙阿弥歌舞伎への招待

名セリフを彦三郎の朗読とアニメで楽しむ電脳紙芝居「河内山宗俊」

春陽堂書店Web新小説編集部

連載 エッセイ (2021年6月号)

兼好のつれづれ絵草紙

一念発起して覚えたちあきなおみの「喝采」。しかし、楽屋での評判は…

三遊亭兼好

連載 エッセイ (2021年6月号)

俳句で味わう、日本の暮らし

中国の行事と古来習俗が融合した七夕。数多の俳人が詠んだ名句を鑑賞

連載 ウェブ絵巻 (2021年6月号)

漱石クロニクル ―絵で読む夏目漱石の生涯―

28歳の漱石。子規と過ごした松山・愚陀仏庵で大いに句作に熱中する

連載 俳句鑑賞 (2021年6月号)

楸邨山脈の巨人たち

独特な格式が存在感を示す楸邨山脈の代表・森澄雄を鑑賞する第一回

連載 医学ミステリー (2021年6月号)

Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える

自制的な生き方によって独自の芸術を開花させた日本画家・川合玉堂

連載 動画&エッセイ (2021年6月号)

假屋崎省吾の絶品紀行~日々を華麗に彩る~

アジサイ、ハナショウブ、愛犬との散歩、「雨に唄えば」で爽快に!

假屋崎省吾

連載 紀行エッセイ (2021年6月号)

銭湯放浪記

子どもの頃に通った板橋・遠藤湯。淡い恋と少年時代の思い出が蘇る

連載 動画 (2021年6月号)

Dr.よねやまの芸脳生活

泉鏡花の生き方にみる季節と病気の関係~Dr.米山の必見YouTube好評配信中

連載 動画 (2021年6月号)

町田康のパンク山頭火ラヂオ

徒然なるままに山頭火を語る町田版自由律YouTube。注目の第4回配信

会員限定閲覧ルーム

会員登録すると、江戸川乱歩や坂口安吾など、当社刊行書籍の電子版が無料で閲覧できる「会員限定閲覧ルーム」は、今後も当社ならではのコンテンツを配信してまいります。

『Web新小説』へようこそ

『Web新小説』は、1889(明治22)年に春陽堂から創刊された文芸誌『新小説』をウェブマガジンスタイルで発行する文芸マガジンです。尾崎紅葉、泉鏡花、夏目漱石、田山花袋、森鷗外など多くの名作を世に送り出した『新小説』のコンセプトを引き継ぎ、現在活躍中の詩人、作家、俳人、写真家から最新の文芸コンテンツを配信します。

「知的ワンダーランド」を目指して

たくさんの情報が速いスピードで押し寄せる現代。『Web新小説』は、読者が流されない自己を発見する手立てとなるような文学作品の確立を目指して、さまざまなカルチャーコンテンツを配信していきます。詩、小説、エッセイ、対談、レクチャーetc. イラストや写真を使ったり、朗読やトーク動画があったり、表現方法は文字にとどまりません。「知的ワンダーランド」を目指して、まさにさまざまな手法で、ユニークな文芸コンテンツを展開していきます。

登録初月は無料!詩も小説も動画も乱歩も読み放題
老舗出版社が発信するマンスリー文芸マガジン

『Web新小説』は、明治11年創業の老舗出版社「春陽堂書店」が発信する会員制文芸マガジン。会員登録をすると、谷川俊太郎さん、町田康さん、黛まどかさん、黒川創さん、伊藤比呂美さん、假屋崎省吾さん、三角みづ紀さんをはじめとする最新の文芸コンテンツや動画がパソコン、スマホで定額読み放題。

さらに、「江戸川乱歩文庫」全30巻、坂口安吾、太宰治、織田作之助らの小説コレクションを中心に、春陽堂書店が出版してきた多くの近現代文学の中から選りすぐりの書籍を専用ビューアで閲覧できる「会員限定閲覧ルーム」を搭載しています。

しかも、登録初月は無料で購読可能。スマホやタブレットでコンテンツや動画を楽しむ『Web新小説』ならではの新しい読書を、どうぞ体験してください。

登録をするとこんなに楽しい

1)ココでしか読めない毎月配信の最新コンテンツとバックナンバーが読み放題
2)新しいカルチャーに触れるオリジナルイベントに優待価格で参加できる
3)パソコン・スマホ・タブレットで楽々読めるタテ書きを採用
4)専用ビューアで乱歩文庫 30 巻、安吾、太宰などの電子書籍コンテンツが読み放題

購読料:月額 1100 円(税込み)
・クレジットカード自動引き落とし
・Amazon Payで支払い可
※登録初月無料はクレジットカード登録のみ可能
更新:毎月 1 日にコンテンツ更新

会員は特別価格で新スタイルイベントに参加可能

『Web新小説』では作家と交流できる会員優待のイベントを多数企画し、発信しています。イベント開催そのものが大変困難な時代、まさに新しいスタイル、新しい感覚での文芸体験が求められていると『Web新小説』は考えます。参加作家によるYouTubeレクチャーや朗読動画、イベントレポートなど、ウェブマガジンならではの動画コンテンツを充実させながら、新しい感覚のオンラインイベントを、ただいま発信準備中です。作家と楽しむオンラインサロン、映像とオーディオで楽しむ番組など、今をときめく詩人や作家、アーティストと交流することで生まれる、新しい文芸体験を提案していきます。ご期待ください。

各種イベントチケットはPeatix、春陽堂書店オンラインストアで随時販売。会員はお得な会員特別価格で参加が可能です。ぜひ、『Web新小説』ならではのイベントにご注目ください。

新着イベント

2020年10月21日 (水)

早稲田界隈〜目白台

【中止】岡崎武志さんと行く 春爛漫の早稲田界隈~漱石&春樹散歩

2020年10月21日 (水)

大手町サンケイプラザ会議室

【中止】岡本行夫×中村征夫 写真が語る海の真実

Web新小説会員登録はこちら