町田康の読み解き山頭火
町田康
町田康の
読み解き山頭火
町田康
第五回「どうしようもないわたしが歩いてゐる」二
という訳で山頭火は昭和四年正月頃には心身の不調もあり行乞がしんどくなっていた。しかしだからといって他にやることもないので相変わらず歩いていた。
そんななか二月頃には、師・荻原井泉水宛に以下のような葉書を出している。
めつきりあたゝかくなりました、私はぶら〳〵歩いてこゝまで来ましたが、憂鬱なるばかりです、とにかく、もう一度談合して、今生の最後の道に入りたいと念じてをります、山の中を歩いてさへをれば、そして水を味うてさへをれば、私は幸福であります(そして同時に周囲も幸福でありませう、さう考へてゐなければ、こんな我儘な生き方が出来るものではありません)。
山の水れいろうとして飲むべかりけり
かういふ時代遅れの句をくちずさむほど、それほどおちついた気持ちになれます、寂しいけれども安らかな歩みであります。
私も句作生活の第三期に入つたやうです、主観的寂事詩――感傷的でない、写生的でない――としての句
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