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『 アーツ&クラフツ、娘の仕事 メイ・モリスという才能 』

大澤麻衣

アーツ&クラフツ、娘の仕事 メイ・モリスという才能

大澤麻衣

第1回 ナワース城への旅日記

数年前、ここイギリスで一冊の古い日記が発見された。日記には前書きがあって、それはこう始まる。

「これはママのために書いているけれど、もしこの小さな物語が私のことを知らない誰かのもとにいったときのため、まずは自己紹介をしておきましょう。」

緑色のシルク布で装丁された表紙には「ナワース城への旅日記第1巻」の文字。銀箔を一つ一つ丁寧に切り取って、器用に貼り付けてある。

© William Morris Gallery, London Borough of Waltham Forest

念入りに装丁された「Journal of my visit to Naworth Castle, Vol.1(ナワース城への旅日記第1巻)」。メイが姉とカンブリア地方のナワース城を訪れた時、母のために書き残したという

「私はすごくおてんば娘だけど、ここ(ナワース城)では小さい子の悪いお手本になりたくないから、そんなに悪さはしませんでした。3月25日で9歳になります。片付けが苦手でいつも散らかしっぱなし、自分でも恥ずかしいほどいたずらっ子な時もあります。おでこの下あたりで切った髪は軽くカールしています。目は青いです。太ってもいないし、やせてもいません。」

この前置きは終わり方がおちゃめだ。

「ここまで自己紹介したのだから、あとは私が可愛いかブサイクかは読者に判断してもらいましょう。」

実はこの「おてんば娘」こそが、芸術的才能に恵まれ、アーツ・アンド・クラフツの父と言われるウィリアム・モリスの次女、メイ・モリスだった。

© National Trust / Sophia Farley and Claire Reeves

ジョージ・ハワードが描いた10歳のころのメイ。ジョージ・ハワードはナワース城の主で、後の第9代カーライル伯爵。モリス家とハワード家は家族ぐるみの付き合いをしていた

メイ・モリスと聞いてすぐにパッとくる人は少ないかもしれない。でも、私もそうであったように、彼女がデザインした壁紙に見覚えがある人は多いはず。例えばモリス商会のベストセラーである「ハニーサックル」。ウィリアム・モリスがデザインしたと思われがちのこの壁紙は、実はメイの代表的デザインだという。生き生きとのびる枝と、濃淡2色で立体的に描かれた葉。その間を浮遊する繊細な花。メイはハニーサックルという植物の特徴を、たった8つの版木だけでみごとに表現してみせた。

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