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『 寺子屋山頭火 』

町田康

寺子屋山頭火

町田康

第一回 分け入つても分け入つても

或る人に、

「山頭火というその名前は有名だからもちろん知っている。自由律俳句の人ということも、それから僧形で各地を旅をして回った人ということも国語の授業で習ったような気がする。しかしその詩をじっくり味わって読んだことがない。その人のこともなにも知らない」

と言ったところ、

「物書きの看板を上げておきながら山頭火も知らないでどうする。世の中をなめているのか。殺すぞ」

と言われた。それがとても嫌だったので山頭火の俳句を読み、ときどきの詩人の考えたことや詩人の人生に思いを馳せ、そのついでに人間が生き、そして死ぬるとはどういうことなのかについて考えてみよう、と決意したのが二週間前。

だからまだ山頭火のことをよく知らないし、わからないことも多い。けれども知った振りもせず、わからないままに虚心に読んで間違うのも山頭火的か、とも思うので、読んで考えたことをそのままここに綴ることにする。

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