兼好のつれづれ絵草紙
三遊亭兼好
兼好のつれづれ絵草紙
三遊亭兼好
其ノ十八 涼感競演会
暑い。夏は苦手だ。
お天道様に熱せられ、クーラーに冷やされ、身も心もくたくたになる。五十歳をこえて、ただでさえ集中力が衰えているのに、頭がぼんやりして落語があやふやになる。
そんな話を楽屋でしていると、トリの先輩師匠が「俺も夏はダメだ」と言う。
「夏だなぁと思うだけで息が苦しくなるよ。だからみんな、暑苦しいこと言ったら怒るよ。そのかわり、一番涼しくなるようなこと言った人には、ハネてから冷たいビールおごってやるよ」
こんなことを言われると楽屋は急に活気づく。前座を卒業したばかりの後輩が立ち上がった。
「見てください、今日の僕の格好。アロハシャツに半ズボン、涼しげじゃないですか?」
「ダメ。かえって真夏を感じさせる。失格」
「はい!」
もう一人の若い後輩が手を挙げる。
「うちの近くに有名なかき氷屋が
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