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逢坂冬馬著『同志少女よ、敵を撃て』 未曽有の戦争、女性狙撃兵の目で追う

宮川匡司

未曽有の戦争、女性狙撃兵の目で追う

宮川匡司


ここ3カ月余りの間、新聞やテレビが戦争のニュースを報じない日はない。ミサイルで破壊された都市や、逃げ惑う市民の映像もおびただしいほど流れている。外交解決の予想を吹き飛ばすように始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻。この生々しい現実に、フィクションはいまだに追いつけていない。
 その中で、新人作家のデビュー作である逢坂冬馬あいさかとうま著『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)だけは、戦争の現実を直視する確かなリアリティーを獲得した稀有な文学作品となっている。
 第二次世界大戦で、とりわけ凄惨な戦いが繰り広げられたとされる独ソ戦。合わせて3000万人以上もの人命が失われた戦争の被害は、想像を絶する。この長編小説は、この独ソ戦に、女性狙撃兵として従軍した少女を主人公にする。住民の虐殺、民間人女性への暴行、砲撃によって吹き飛ぶ兵士の身体……戦争の凄惨なシーンをいくつも織り込みながら苛烈な戦闘のディテールを表現する描写力は、とても新人とは思えない。
 主人公は、モスクワの近郊の農村に生まれた少女セラフィマだ。母とともに鹿を撃つなどして穏やかな暮らしをしていた

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