楸邨山脈の巨人たち
北大路翼
楸邨山脈の巨人たち
北大路翼
第七回 孤高の才女 寺田京子(一)
苦悩を超えて
金子兜太、森澄雄と男性が続いたので、次は女性の寺田京子にスポットを当てたい。男性が続いてしまったのは意図的ではなく、当時の俳壇では女性作家が殆どいなかったのである。今日ではカルチャースクールの隆盛などからか、男女比がすっかり逆転してしまったが、わざわざ「女流俳人」と銘打つほどに女性作家は珍しかった。特に「寒雷」は、男臭い結社だったので女流の華やかなイメージとは無縁である。僕の聞いた話では、句会だけではなく酒席などでも延々と俳論をぶつけあっていたようだ。摑み合いの喧嘩になることもざら。俳句論議に決着がつくことはない。どちらも引かずに、顔を合わせるたびに喧嘩になっていたのだろう。同じ結社内で争っているというのが美しい。楸邨の懐の深さを感じさせる。そんな中で寺田京子も女流に期待されていた華やかさではなく、文字通り命をかけたヒリヒリとした文体で頭角を
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