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『 二十二歳の愛読者 』

谷川俊太郎

二十二歳の愛読者

谷川俊太郎

小説を書くのに疲れたらしく
中古のソーセキアンドロイドが
机にうつ伏した
胃が痛いのだろうかと
顔を曇らせるのは僕
二十二歳の漱石愛読者

漱石のロンドンは写真で見た
本物のロンドンは去年観光した
何処も似たような地球上だ
文明は宇宙まで駆けて行くけど
文化はここにじっとして
僕を日本語の国へ連れて行く

手書きから活字へさらにフォントへ
人間は大昔から日々の自分の現実を
物語に組み込まずにいられない
あ ソーセキアンドロイドが顔を上げた
ジロリと僕を見てフンと鼻を鳴らした
思わずすみませんと言ってしまった

窓の外では春の陽が穏やかだ

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