気まぐれ編集後記
春陽堂書店Web新小説編集部
気まぐれ編集後記
少子高齢化の加速した日本、満75歳以上に生死の選択権を与える制度が国会で可決された――そんな空想を前提に作られた映画が「PLAN75」だ。否、空想ではないかも知れない。少子化は高齢者を今の社会保障の状態そのままにしてはおかない可能性もあるからだ。
還暦を過ぎた身として、見た後の気分はいいものではなかったが、「社会が弱者への優しさを失うと若者も蝕む」という早川千絵監督の意思は強く感じられた。
人間の死亡率は百%。いずれ誰でもお迎えが来る。どんな形で私はそのお迎えに応じれば良いのか。一生で一番難しい方程式だ。
だが、それを一人ひとりが解かねばならぬ時代がやって来たようだ。それを理解する意味でも、この映画を見る価値はある。いのちはいつだって最後までしっかり生きようとするから。
(本誌編集長)