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『 旅する少年 』

黒川創

旅する少年

黒川創

12 二つの短い旅の記憶

一九七六年夏、中学三年生のときの沖縄旅行への出発は、前章で述べたように八月七日。それまでの夏休みの旅より、ずいぶん遅い出発だった。これには理由がある。

じつは、この年も、七月下旬、夏休みに入って早々、私は別の短期間の旅をしていた。その旅からいったん京都の自宅に戻り、あらためて沖縄への旅に出たのだった。

時間的に前後するが、ここで、七月下旬の短い旅の話もしておこう。

行き先は、山口県の日本海側、響灘ひびきなだの沖合にある蓋井島ふたおいじまという面積二・三五平方キロほどの小さな島である。当時、人口はおよそ一五〇人だった(いまは、さらに減少し、三〇余世帯、八〇余人となっている)。下関市のはずれにある吉見漁港から、日に二往復、渡船が通っていた。

こんな島に、どうして私は行きたかったか。小学六年生(一九七三年)の冬、初めて北部九州・山口県方面への旅をしたとき、下関の火の山ユースホステルに止宿しながら、山陰本線の長門市方面でのSL撮影に通った。往復するたび、途中の吉見駅で、蓋井島への渡船が近くの港から出ているという掲示があることに、気持ちを引かれた。以来、いつか機会をとらえて、この島に渡ってみたいものだと思っていた。

ふと思いたち、この夏、その島で三泊という小旅行に、親しい同級の悪友、田村順一を誘った。一人旅が好きな私だが、

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