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『 伝統と破壊の哲学 』

増田伸也

伝統と破壊の哲学 Vol.3

「なぜ僕は写真で世界を目指すのか」

増田伸也

HANAFUDA SHOUZOKU#2, 2017, Shinya Masuda

「高額取引」

それは小学校3年生の肌寒い日のことであった。
授業と授業の間には10分程度の休憩時間があり、生徒達はそれぞれ気の合う友人の机に集まる。
前の晩に観たテレビ番組や放課後の野球をどこでやるかなど、たわいもない話題で盛り上がる。
その日の僕はというと野球の話はうわの空で、朝、出がけに祖母からもらった仁丹が気になって仕方がなかった。
ご存じの通り、仁丹とはバス遠足の酔い止めの友として当時絶大な人気を誇っていた小さな銀色の玉粒である。
しばらくバス遠足に行く予定のない僕は、この仁丹について酔い止め以外に良い利用法がないかと思いを巡らせていた。

そうしてついに思いついた。この米粒より小さい玉を使って、クラスのみんなをあっと言わせてやるんだ!
僕はこの衝動を形にすべく、急いで席に戻り、ジャポニカ学習帳の最後のページを剥ぎ取って、切り貼りしはじめた。

工作の授業ではない自由な創作時間は、提出期限も存在しないためノープレッシャーだ。
こういった時、僕には無数のアイデアが滴り落ちてくる。

しばらくすると僕の机の周りにはちょっとした人垣ができていた。

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