登録初月は無料、バックナンバー【作家58人、連載回数416回】も読み放題! 会員登録はこちら  今すぐチェックする

藤沢周・連作小説館⑦ 言問

藤沢周

藤沢周・連作小説館⑦


言問こととい

藤沢周

さんざめく新緑の戯れに溜息をつく。

葉影の間から覗く遠い海のきらめきをも、力なく茫然と見やる。

一体、俺はどうしたというのだろう。

こんなにも若々しく艶やかな葉が群れ踊り、その間から見える相模湾の光が眩しく瞬いているというのに……。

鎌倉の山中は繁茂した初夏の樹々からのいきれでせそうなほどだが、時々幹の間をすり抜ける涼しい風が一掃する。すぐにも腐葉の下の黒土が黴臭い気を醸し、奔放にあふれる草や葉の青臭さに包まれては、また海からの風が掃いてくれる。

爽やか、などという言葉を使うのもためらわれる歳になってしまったが、緑陰の風といい、目の奥まで慰撫してくれるような若葉の緑といい、心地いいはずなのだ。マスクを外して一歩一歩人のいない鎌倉の山径を歩いて行くたびに、シジュウカラやエナガやホオジロの鳴き声が頭上で木霊もする。落ち葉の堆積する径をしっかりと踏みしめながら行けば、まだわずかに身に残っている精気が甦ってくるというもの。それなのに……。

登録初月は無料

ここから先をお読みいただくには
会員登録をお願いいたします

登録をすると、創刊号(2020年2月1日号)からのバックナンバーをすべてお読みいただけます。

最新号のコンテンツ

特集「この作家を読もう ──新刊を撃て!」 (2022年6月1日号)

逢坂冬馬氏インタビュー

侵略戦争の過去と現在などを『同志少女よ、敵を撃て』の著者は語る

連載 (2022年6月1日号)

Looking for 鷗外

紆余曲折の末ベルリンへ。未知なる鷗外との邂逅を綴る新連載スタート

伊藤比呂美

連載 書き下ろし連作小説 (2022年6月1日号)

藤沢周・連作小説館⑦ 言問

樹々からのいきれに蘇る父との記憶。これは過去なのか、現在なのか

連載 連載小説 (2022年6月1日号)

猛獣ども

山の中で醸成される噓と絶望。助けを求めて繰り返される、空しい賭け

連載 エッセイ (2022年6月1日号)

町田康の読み解き山頭火

行乞の矛盾と生存の問題に苦しむ山頭火は、草庵に定住することを願う

連載 俳句エッセイ (2022年6月1日号)

アマネク ハイク

鈴木真砂女ゆかりの小料理屋の思い出から「切れ」の魅力を解き明かす

連載 エッセイ (2022年6月1日号)

兼好のつれづれ絵草紙

雨の中会いに来た友を目で追う隠居。「碁敵は憎さも憎し懐かしし」

三遊亭兼好

連載 ウェブ絵巻 (2022年6月1日号)

漱石クロニクル ―絵で読む夏目漱石の生涯―

京都旅行を楽しむも体調は悪化。漱石山房にて、若い門下生らと過ごす

連載 俳句鑑賞 (2022年6月1日号)

楸邨山脈の巨人たち

旅情あふれる沖縄の景色から妻との思い出まで、静かで深い欣一の世界

連載 医学ミステリー (2022年6月1日号)

Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える

最終回は生涯現役の武者小路実篤。大往生は肯定的な生き方の賜物か

連載 エッセイ (2022年6月1日号)

江戸の愛猫

江戸の夏の風物詩、隅田川の夕涼み。猫が舟に乗った団扇絵の秘密とは

連載 猫エッセイ (2022年6月1日号)

Q&A今月の猫じゃらし

突然、飼い猫が手にがぶっと噛みついた! こりゃ一大事と思ったが

連載 動画 (2022年6月1日号)

Dr.よねやまの芸脳生活

「まとめ!明治の芸術家たちの生き様」~Dr.米山のYouTube最終回

連載 動画 (2022年6月1日号)

町田康のパンク山頭火ラヂオ

徒然なるままに山頭火を語る町田版自由律YouTube。注目の第4回配信

バックナンバー (2022年6月1日号)

歌舞伎役者.坂東彦三郎朗読動画バックナンバーの部屋

坂東彦三郎が朗読。河竹黙阿弥の歌舞伎狂言12選 絵は辻和子

春陽堂書店Web新小説編集部

バックナンバー (2022年6月1日号)

岡もみじショートショート漫画バックナンバーの部屋

妄想膨らむ楽しい「しおり物語」の世界へようこそ! 全6回一気読み

編集後記 (2022年6月1日号)

気まぐれ編集後記

筆のさえが際立つ「寺子屋山頭火」。会員登録で繰り返し味わえる喜び

春陽堂書店Web新小説編集部

登録初月は無料

Web新小説会員登録はこちら