アマネク ハイク
神野紗希
アマネク ハイク
神野紗希
第二回 新池の蛙
ぽこぽこと水の湧く音、明るい鳥のさえずり、鳴き交わす蛙の声。蓮の葉を浮かべた池の上には、色とりどりの蝶が行き交う。息子は虫眼鏡をたずさえ、泡の底を覗きこむ。すると、ぴょこんと蛙が出てきて、池を自由に跳びまわる……。
青い空の下、のびのびと戸外遊びをしているようだが、ここは商業ビルの一角。最先端のデジタル技術によって自然を再現した、子ども向けの屋内型テーマパークなのだ。蛙の池も、アミューズメントの一つ。虫眼鏡を模した丸い輪っかをかざせば、蝶や蛙が飛び出して、水辺の虫捕りが疑似体験できる。
単にデジタルで映像が映し出されるだけでなく、「輪をかざす」というアナログの感覚が連動するところが、一歩進んでいる。蛙の池の他にも、映し出された食材を木の包丁で料理するクッキングスペースや、泥団子に見立てたボールをスクリーンに投げて、映像のカバやゾウに泥をつけるイベントもある。バーチャルな自然を、現実の出来事として体験できる仕組みになっているのだ。
「ねえねえ、ママのあしもとにいるよ!」息子に教えられ、泡に輪っかをかざしてみる。すると、
登録初月は無料
ここから先をお読みいただくには
会員登録をお願いいたします
登録をすると、創刊号(2020年2月1日号)からのバックナンバーをすべてお読みいただけます。