ゆるめる場所、ゆるめる時間──それが浪曲 浪曲師 玉川奈々福
玉川奈々福
ゆるめる場所、ゆるめる時間
――それが浪曲
玉川奈々福
「浪曲」という芸をご存じでしょうか。落語、講談と並んで三大話芸と言われていますが、実演家は落語と比べて大変少ないので、聞く機会も落語と比べると圧倒的に少ないです。
落語や講談と違って一人の芸ではありません。上手側に三味線を抱えた「曲師」がいて、三味線の音色にのせながら、二人三脚で物語を、語り奏でていく芸です。
落語は「笑い」、講談は「怒り」、そして浪曲は「涙」の芸だと言われているそうですが、私が入門した28年前は、浪曲大好きなお客さんもいましたが、「浪曲」と聞いただけで、顔をしかめる方もいました。
いわく。
「浪曲っておじいさんが青筋立ててうなる、お涙頂戴の話でしょ」「途中で眠くなるやつ」。
このイメージ。これが妨げとなって、足を運んでもらうことがまず難しい。私のキャリアの前半は、この先入観との闘いでした。
どう戦えばいいか。
「お涙頂戴」というイメージを一番心地よく裏切る方法――浪曲に
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