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『 アーツ&クラフツ、娘の仕事 メイ・モリスという才能 』

大澤麻衣

アーツ&クラフツ、娘の仕事 メイ・モリスという才能

大澤麻衣

第5回 モリス家の二人姉妹

ある日、ウィリアム・モリスの妻、ジェーンのもとへ一通の手紙が届いた。モリス家の幼い二人娘、長女ジェニーと次女メイについて尋ねるものだった。

「ジェニーはそろそろ吟遊詩人に、メイも絵描きになっただろうか」

送り主は、ラファエル前派の画家、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ。ジェーンと生涯愛人関係にあった彼は、姉妹の才能開花を今か今かと待ち望んでいた。

ロセッティによるメイ(左)とジェニー(右)のスケッチ(1871年)。ロセッティはモリス商会のパートナーであり、別荘「ケルムスコット・マナー」の共有者でもあった。彼はジェーンだけでなく、二人の娘も作品のモデルにした

年子で仲のよかったメイとジェニーの姉妹は、学校へは行かず、ホームスクールで育った。当時ホームスクールは珍しいことではなかったが、モリス家では一般的な「淑女のための教育」という慣習にとらわれず、姉妹の幼少時代はわりと自由だった。二人は自立心と好奇心が強く、大人の手を煩わせることが少なかったという。特に自然に囲まれたオックスフォードの別荘「ケルムスコット・マナー」では、自分たちで面白いことを次々と見つけ、一日中飽きもせずに一緒に遊んだ。

また、何よりもこの二人が恵まれていたのは、ロセッティのような著名なアーティストたちに日常的に囲まれていたことだろう。ラファエル前派のもう一人の画家、エドワード・バーン=ジョーンズとも家族ぐるみの付き合いをしていたし、姉妹の感性は自然と磨かれ、ペンが持てるようになった頃には何かしら絵を描いていたとしても不思議ではない。

そんな二人だったが、やがてお互いの方向性が変わってくる。きっかけは、ジェニーが15歳の時に発症した「てんかん」だった。

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