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鬼ものがたり

桑原茂夫

鬼ものがたり

桑原茂夫

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妖しいお堂の女あるじ 編

絵 東學

わたしが若かったときのことで、まだ誰にも打ち明けたことのない、恐ろしい話があります。

宮中にも出入りを許されていた頃、御多分にもれず、わたしにも、ひそかに逢瀬をたのしむおもいびとがありました。もちろん初めのうちは足繁く通っていたのですが、だんだん間遠になり、それでも縁を切ることはせず、まあ相手からは身勝手と思われてもしかたない振舞いをつづけていました。

   ●

夏も近くなっていたそのときも、にわかにそのひとの肌に触れたくなり、久しぶりに出向いていきました。いつもそのひととの逢瀬を取り次いでくれていた女性のところに訪ねていくと、気ままなわたしを見て、さすがにいい顔はしませんでしたが、アタマから断るような不粋なことはしませんでした。

ただ、と言い淀んだので、追い打ちをかけるように、問いただしてみると、そのひとがわたしを待ち望む気持ちに変わりはないし、取り次ぐことに問題はないのだけれど、いつもそのひとと一夜を過ごす家が使えないというのです。今夜は遠くから都に来た人たちが宿泊していて、どうにもなりません、と。

これは、体よく断られたのかな、と思ってその家をさりげなく覗いてみると、馬が何頭もつながれ、人びとがあわただしげに、動き回っていて、一目でこれはダメだとあきらめかけましたが、取り次ぎ役の女は、すぐに別の場所をすすめてきました。

「ここから西の方へ少し行ったところに、無人のお堂があります。今夜はそこでお過ごしになったらいかがでしょう。

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