谷川俊太郎×三角みづ紀スペシャルオンライン対談と朗読公開中!  今すぐチェックする

『 旅する少年 』

黒川創

旅する少年

黒川創

5 初めての北海道

ローティーンのとき、北海道には続けざまに五回、長旅をした。

一九七四年(中学一年)夏、同年冬、一九七五年(中学二年)春、同年夏、同年冬、という、一三歳から一四歳にかけての計五回である。合わせて三カ月近く北海道に滞在したことになるのではないか。私の場合、ひとたび旅を始めると、一日でも旅する時間を引き延ばしたいたちで、ホームシックになったことは一度もない。

ただし、これを記述しようとすると、厄介な問題も生じる。なにより、旅程の記憶が判然としなくなっている。あれは何度目の旅のときだったかな? と、記憶をたどりなおすのも、なかなか難しい。

一つには、寝袋を持ち歩き、ヒッチハイクしたりもするようになって、旅のしかたが融通無碍になる。さらに、入場券その他、「行動の裏付け」となる材料をいちいち買い残す習慣が薄れていく。そもそも、離島や路上は、そんなものと縁がない。自分が撮った写真などは、慎重に見ていけば手がかりとなってはくれるが、当時のものがすべて保存できているわけではないだろう。

北海道は、若い旅行者たちに寛容な土地柄だった。いまもそのことに感謝している。だが、それを裏切ってきたような記憶も残る。

旅に疲れて、ねぐらを見つけきれず、駅の外れにある貨物用の屋根付き選荷場のようなところにもぐり込み、コンテナなどの隙間で眠ったことがあった。旅先で知り合った同行者も、そのときは一人か二人いたのではないか。夏の終わりだったか、夜になると肌寒かった。そういうときには、古新聞を集め、シャツの下などに入れておくと、

ここから先をお読みいただくには
会員登録が必要です。

最新号のコンテンツ

連載 エッセイ (2020年11月号)

寺子屋山頭火

生涯を通じて山頭火の人格に影響を及ぼした、幼い頃の衝撃的な出来事

連載 動画 (2020年11月号)

オンライン対談「詩人が語る今」

60分スペシャル番組谷川×三角オンライン対談と朗読「詩人が語る今」

谷川俊太郎×三角みづ紀

連載 連載詩 (2020年11月号)

最少の言葉で詩作する試み

言葉の氾濫へのアンチテーゼか。詩人が語りかけるミニマムの言葉

谷川俊太郎

連載 連載詩 (2020年11月号)

週末のアルペジオ

私たちはみな待っている。ひそかに紡がれた変化が、静かに芽吹く日を

三角みづ紀

連載 フォト小説 (2020年11月号)

スーパーフィッシュと老ダイバー

クララにもういちど会いたい。ハンスが叫ぶと海に鮮やかな色が蘇った

連載 エッセイ (2020年11月号)

俳句で味わう、日本の暮らし

煤払、松迎え、餅つき、年木樵。着々と進む正月準備を歌う句を鑑賞

連載 回想記 (2020年11月号)

旅する少年

極寒の大地の洗礼を受けながらも「傷だらけの天使」最終回を見る

連載 医学ミステリー (2020年11月号)

Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える

人間関係が人生を変える。幸運を運ぶ一方、命取りとなった漱石の人脈

連載 スポーツ随想録 (2020年11月号)

スポーツは文芸をどのように彩ってきたか

沢木耕太郎の活躍がスポーツ・ノンフィクションに新たな時代を拓いた

連載 妖異譚 (2020年11月号)

鬼ものがたり

誘われるまま入った庵で交わった女。彼女が一人語る恐ろしい告白……

連載 アート&エッセイ (2020年11月号)

伝統と破壊の哲学

出口さんが黒い紙に描いた赤い雪だるま。すごいぞ! 僕は歓喜した

連載 新人デビュー小説 (2020年11月号)

愛のレシピ:23歳

どん底から救い上げてくれる魔法のスープ、玉子雑炊に込められた想い

連載 動画 (2020年11月号)

Dr.よねやまの芸脳生活

「漱石に学ぶ病気と運」Dr.の必見役立ちレクチャー好評配信中

連載 動画 (2020年11月号)

町田康のパンク山頭火ラヂオ

徒然なるままに山頭火を語る町田版自由律YouTube。必見の第2弾

Web新小説会員登録はこちら