旅する少年
黒川創
旅する少年
黒川創
5 初めての北海道
ローティーンのとき、北海道には続けざまに五回、長旅をした。
一九七四年(中学一年)夏、同年冬、一九七五年(中学二年)春、同年夏、同年冬、という、一三歳から一四歳にかけての計五回である。合わせて三カ月近く北海道に滞在したことになるのではないか。私の場合、ひとたび旅を始めると、一日でも旅する時間を引き延ばしたいたちで、ホームシックになったことは一度もない。
ただし、これを記述しようとすると、厄介な問題も生じる。なにより、旅程の記憶が判然としなくなっている。あれは何度目の旅のときだったかな? と、記憶をたどりなおすのも、なかなか難しい。
一つには、寝袋を持ち歩き、ヒッチハイクしたりもするようになって、旅のしかたが融通無碍になる。さらに、入場券その他、「行動の裏付け」となる材料をいちいち買い残す習慣が薄れていく。そもそも、離島や路上は、そんなものと縁がない。自分が撮った写真などは、慎重に見ていけば手がかりとなってはくれるが、当時のものがすべて保存できているわけではないだろう。
北海道は、若い旅行者たちに寛容な土地柄だった。いまもそのことに感謝している。だが、それを裏切ってきたような記憶も残る。
旅に疲れて、ねぐらを見つけきれず、駅の外れにある貨物用の屋根付き選荷場のようなところにもぐり込み、コンテナなどの隙間で眠ったことがあった。旅先で知り合った同行者も、そのときは一人か二人いたのではないか。夏の終わりだったか、夜になると肌寒かった。そういうときには、古新聞を集め、シャツの下などに入れておくと、
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