『 スポーツは文芸をどのように彩ってきたか 』
玉木正之
スポーツは文芸をどのように彩ってきたか
玉木正之
第十回 野球(ベースボール)が「スポーツ文芸作品」の王者に君臨する理由
アメリカで誕生するか、この地で大きく発達・発展したアメリカ型の球戯(ベースボール、バスケットボール、アメリカン・フットボール、アイスホッケー)と、ヨーロッパで生まれ、発展したヨーロッパ型の球戯(サッカー、ラグビー、ホッケー)には、大きな違いがいくつかある。
一つはアメリカ型の球戯には審判が最初から複数存在したこと。複数の審判が相談して最終決定を下すのは、まさにアメリカン・デモクラシーの象徴とも言える。それに対してヨーロッパ型の球戯は、最初審判など存在していなかったが、そのうち判定が難しくなって審判を招くことになった。レフェリーとは「仲裁を引き受けた人」の意で、ヨーロッパ史のなかでは啓蒙専制君主的存在であり、すべての判定をレフェリーが一人で下す。
従って時間の制限がある球戯の時間は、ヨーロッパ型の球戯では主審が手にした腕時計で決まる。が、アメリカ型球戯の時計は民主的に観客にも見えるところに設置されている。あと何分何秒で試合が終わるかが、誰の目にも正確にわかるようになっているのだ。
このアメリカ民主主義型と、ヨーロッパ啓蒙専制君主型のゲーム進行の違いに加え、
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