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『 スーパーフィッシュと老ダイバー 』

岡本行夫

スーパーフィッシュと老ダイバー

岡本行夫

第8章 スピードへの挑戦 ― 叫び

帰ってきたジョージを見る仲間たちの眼は冷たかった。いちどコミュニティーから出ていった異端者が、ふたたび受けいれられることはないのだ。

ジョージは、後悔と屈辱にさいなまれて、孤独な生活に戻った。

うちひしがれて、海底にじっとしていた。好奇心をもったばかりに、みじめに挫折してしまった。ハンスのところへも、失敗を話しにいく勇気がなかった。

そして、また満月の夜がやってきた。月の光が海中にさしこんで、静かな夜だった。なぜか、その日は、夜行性の生きものも、隠れて外に出てこなかった。

ジョージは、小さな洞窟に身をひそめていたが、そこには、いつもよりずっと多くのランタン・フィッシュが群れていた。小さなふしぎな魚で、眼のすぐ下にある発光体から、二条の強い光を発するのである。かれらのサーチライトの光が、闇をつらぬいて伸び、乱舞していた。眼もくらむような光景を、ジョージは、じっと見ていた。

とつぜん、かれらの動きが止まり、光がすべてジョージに当てられた。ジョージのまわりに光がおどり、ゆらいだ光の波は海底に反射して、海底も光でゆらぎ始めた。光と、闇と、光と。三層の世界がジョージをくるんだ。

そのなかで、ジョージの魂もゆらぎはじめた。

そして、あのときとおなじ声が聞こえた。

「ジョージ、自分の声に耳をかたむけよ! 自分の声は、なんと言ってるのだ? 声に従え!」

ジョージは、すぐに洞窟の外に出た。

ふたたび、声が聞こえた。さっきよりも大きかった。

「ジョージ、すべてを捨てて、こころの叫びに従え!

おまえたちの海に、異変が起こっているのだぞ。海が破壊されるぞ!

さあ、もういちど立って、行くのだ!」

雷に打たれたように、しばらくは放心状態だった。

そして、涙がわいてきた。すぐに水に流されてしまったが、悲しみの涙ではなかった。ジョージは、思わず叫んでいた。どこか、自分以外のところから出た声のようだった。

「やり直すぞ!」

翌日、ジョージは、いつもの場所にハンスに会いにいった。その日も、ハンスは座っていた。

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