兼好のつれづれ絵草紙
三遊亭兼好
兼好のつれづれ絵草紙
三遊亭兼好
其ノ九 咄家と符丁
咄家の符丁の一つに「のせる」という言葉がある。語源がはっきりしないのだが「食べる」という意味だ。「お昼だから少しのせていこう」「のせたら眠くなっちゃいました」等と使う。「あいつは大のせだな」と言えば「大食漢」のことだ。
私が入門して間もない頃、一門の特別興行があって、昼夜二回公演で大変忙しい日があった。先輩の前座が五人いて、一番下の私は先輩に言われるままあちこち動き回っていた。立前座(前座の中の責任者)が私に向かって「おい、牛丼を前座の人数分買ってこい」と言う。急いで買って来ると、
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