兼好のつれづれ絵草紙
三遊亭兼好
兼好のつれづれ絵草紙
三遊亭兼好
其ノ六 怪談咄の極意
私の母は、お化け屋敷で失神したことがある。それも遊園地にある本格的なものではなく、兄の通っていた高校の文化祭で、生徒達が段ボールと暗幕、お面と手作り衣装で拵えた安直なお化け屋敷で、である。
「面白そうね」と中に入ると、途中断末魔に近い悲鳴が何度か聞こえ、だいぶ静かになったなと思っているところへ、狼男のお面と骸骨の衣装を着た生徒二人に抱きかかえられて母が出てきた時には、ひっくり返って笑った。もっとも私もその血を受け継いでいるのだろう。見かければ必ずお化け屋敷に入るのだが、だれよりもキャーキャー叫んで、前後して入った女子高生にゲラゲラ笑われている。怖いもの好きの怖がりだ。
夏場になると、寄席では「怪談咄」がかかる。
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