エピソードで知る種田山頭火
春陽堂書店編集部
エピソードで知る種田山頭火
自由律俳人、漂泊の人生早わかり
春陽堂書店編集部 編
実家の破産に加え、自身の飲酒や放埒な生活のため、常に経済的に困窮していた山頭火は、借金の名人でもあった。踏み倒すことも多かった借金は一生続いたのだった。
大正六年三月 福岡県小倉 小倉の旅館で料金が払えず、三日前に防府の句会で初めて会ったばかりの二人の後輩に大金十五円を持ってきてくれるよう手紙を書き、宿の若おかみに届けさせる。この二人は下関の郵便局員で、積立貯金をおろして小倉へ駆けつけた。 「私は今、非常な窮地に立つてをります。金を拾五円ほど貸していただけませんでせうか。どうぞ私の心情をお察し下さつて此窮境から救ひ出して下さるやうに切に切にお願ひいたします。私は此おかみさんの宅で待つてをります。 小倉市京町福徳にて 山頭火」 小橋蓮男と渡辺さとる宛の手紙(一部を抜粋)
昭和七年六月~八月 山口県川棚温泉
この年、山頭火は福岡、佐賀、長崎など九州の旅を経て、五月、下関から山口をまわったのち、川棚という土地に落ち着きたいと願う。しかし、なにしろ金はなく、ここでもやはり借金頼み。川棚温泉の旅館に逗留して、草庵を結ぶための金や保証人を後援会や知り合いに依頼するが、うまくいかず失敗する。
あすはよいたよりがあらう夕焼ける
日記 昭和七年七月十五日
文とイラスト/もろいくや