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『 伝統と破壊の哲学 』

増田伸也

伝統と破壊の哲学 Vol.8

「なぜ僕は写真で世界を目指すのか」

増田伸也

HANAFUDA SHOUZOKU#14, 2017,Shinya Masuda

「ザリガニトリ」

「スガイマンションのスロープ」で起きた流血事件から見事に復活を遂げた僕は、ますます調子に乗っていた。

僕が調子に乗るのには、大きな理由があった。
小学校で、僕はスーパーカー博士と呼ばれるようになっていたのだ。
池沢さとしの連載漫画『サーキットの狼』が始まる頃には既にランボルギーニ・ミウラとイオタの違いを語り、BMWと書いてヴェムヴェーと発音する非常に扱いづらいマセガキとなっていた。

僕は世の中で『サーキットの狼』が大ブレークする前に、スーパーカーの醍醐味をわかりやすく説明しているこの漫画本をバイブルとしてクラスのみんなに勧めていた。
その後、空前のスーパーカーブームがやって来たため、「あいつには先見の明がある」とクラスメイトから一目置かれるようになり、僕を中心にその漫画本を回し読みするグループまでできていった。
そのグループの初期メンバーにヨッツンという男の子がいた。
ヨッツンには小3にして既に完成された貫禄があった。
下町地区の子供たちのドン的な存在であり、仲間のナガちゃんたちをいつも引き連れていた。
イガグリ頭に日焼けした笑顔が悪童キャラクターそのものであったが、いじめっ子のいばりんぼではないところがヨッツンのすごいところで、おまけに野球もうまかったからクラスのみんなに人気があった。

ある日、僕がヨッツンに漫画本の最新号を一番に貸し出す代わりに、ヨッツンは僕に「アメリカザリガニがウジャウジャいる秘密のポイント」を特別に教えてくれることになった。
ただし、ほかのみんなには言わないことが条件である。

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