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スポーツは文芸をどのように彩ってきたか

玉木正之

スポーツは文芸をどのように彩ってきたか

玉木正之

第五回 究極のスポーツ小説は「愛」と「死」の「身体的表現」である  虫明亜呂無と倉橋由美子

『オリンポスの果実』というオリンピックに出場した若者たちの恋愛小説で、作家として不動の地位を得た田中英光は、しかし、自ら1932年のロサンゼルス五輪にボート選手として出場しながら、ボート競技(スポーツ)については、一切何も書かなかった。

《漕いだものには書かなくても判り、漕がないものには書いても判らぬ》

そのボート競技について虫明亜呂無は、1964年の東京五輪に挑戦するボート選手たちを通して、きわめて微細な筆致で次のように詳述した。

《オールに両腕をかけ、ストレッチャー・ボード(蹴り板)を両脚で蹴る。スライディング・シート(移動座席)が滑車の音を澄んだ川風に響かせながら移動してゆく。広く、深く、力強く、水との訣別をくりかえすオールの動き。前傾姿勢を徐々におこしながら水にさぐりをいれ、水の精との出会いをくりかえす。/オールが撓う。オールがきしむ。オールを支え、締める金具が、乾いた悲鳴をあげる。水の量感、水滴のあつまりのように淡く、軽快で、率直な量感がオールをとおして伝わってくるうちに、怒濤のたくましい手ごたえ》へと変化する。

《(ランニング・ウォーターか?)/艇は停止している。ボートが理想的な漕法、

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