山折哲雄ロングインタビュー(後編)
山折哲雄
日本列島には生き残りの知恵があった
山折哲雄ロングインタビュー(後編)
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、5カ月余りを経ても収束する気配がない。世界を揺るがす欧州での戦争の行方を注視しながら、宗教学者の山折哲雄さんは、人類の長い歴史に思いを馳せる。いま何を支えにして混迷する世界に向き合うべきなのか。91歳の碩学は、日本人が育んできた生き残りの知恵に注目する。
聞き手は宮川匡司(ジャーナリスト)
幸せになりたくないんだ、自由がほしい
―― 私は、敗戦の時はまだこの世に生を受けていませんが、77年前の敗戦を、どう受けとめたのでしょうか。
私は敗戦のときに旧制中学の二年ですよ。あのときはもう、全身的な解放感に包まれましたね。どっとアメリカから民主主義が入ってきて、これこそ救いの神だと思ったくらいです。一時はマルクス主義に染まって、また離れていって、そういう青春時代を送ったんです。そのころ下宿をしていまして、ある新興宗教に入っていた友人が、しょっちゅう来ては「入れ入れ」と言ってきた。もちろん入らなかった。浄土真宗の寺のせがれだから、ということももちろんあるんですが(笑)。そういう勧誘が非常にわずらわしかったということもある。