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『 愛のレシピ:23歳 』

下平咲

愛のレシピ・・23

下平咲

今までで一番美味しいチャーハン

「おなかへった」
独り言のように兄が言った。
時計の針はもうすっかり正午を過ぎていた。

冷蔵庫の中を見ると、昨夜の残ったご飯と卵、牛の薄切り肉が目に入った。
野菜室にはネギもあったので、「チャーハンなら作れそうかも」と私が言うと、
兄の表情がパッと明るくなって「作って!」とすぐさま答えが返ってきた。


物心ついた時から、兄とは別々に暮らしていた。

離婚後、長野に居づらくなった母は、私と兄を連れて東京に住み始めた。
アルコール依存症だった母のお酒を止めさせようとしていた兄は、
母が出かけている隙に、彼女が祖父母に内緒で飲んでいたお酒を見つけ出しては、
長野に住む祖父母に「またママがお酒を飲んでないって言いながらお酒を飲んでたよ」と
電話で告げ口をした。その度に母は祖父母たちに電話でこっ酷く怒られていた。
母は兄の監視を恐れ、お酒の隠し場所をどんどん変えていったが、結局兄の目を誤魔化すことはできなかった。

母の症状がエスカレートしていくうちに、兄と母の関係は悪くなっていった。

そんなある日、兄が目を覚ますと、兄の枕元に包丁が刺さっていたそうだ。
「いつか殺されるかもしれない」
そう思った兄はすぐに祖父母の家に電話をかけ、事情を聞いた祖父は激怒し、
その日のうちに兄を引き取りに東京のマンションまで押しかけてきた。

長野の母の実家に引き取られた兄は、祖父と祖母の養子になり、

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