Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える
米山公啓
Dr.よねやまの芸脳生活
芸術家の生き様を医学で考える
米山公啓
第二回 島村抱月とスペイン風邪 ②
感染
抱月は演劇研究より舞台そのものに夢中になってしまった! 画/米山公啓
抱月は1902年5月にイギリスに到着した。早稲田大学からの私学留学生としてロンドンに立った。ヨーロッパを肌で感じたかったという抱月は、留学生として何かを学ぶというより、3年間の留学の間、芝居を見まくることになる。劇場に百回以上通っている。
何も演劇の研究をするためにロンドンに来たのではなかった。抱月はロンドンで演劇そのものにすっかり魅せられてしまったのだ。
同じ頃に国費留学をした夏目漱石は、文化や環境の違いから現地で神経衰弱になり、留学の目的だった英文学の研究に集中できないどころか、ロンドンの下宿先にこもって文句ばかり言っていたとされている。
立場は違うのかもしれないが、抱月は漱石とは違い、自由な留学を満喫したと言っていいだろう。が、それがそのあとの抱月の生き方まで変えてしまうことになる。
私自身も実に好き勝手をやってきたのでほぼ後悔のない人生であると自称している。ただ唯一の後悔は、
登録初月は無料
ここから先をお読みいただくには
会員登録をお願いいたします
登録をすると、創刊号(2020年2月1日号)からのバックナンバーをすべてお読みいただけます。