楸邨山脈の巨人たち
北大路翼
楸邨山脈の巨人たち
北大路翼
第四回 強靭な静寂 森澄雄(一)
貧しさと清らかさ
楸邨山脈において、金子兜太と双璧を成すのが森澄雄であろう。両者とも大正八年生まれながら作風は異なり、むしろ対局的である。兜太が動なら澄雄が静、兜太が俗なら澄雄が雅と言ったところだろうか。同じ楸邨門から、同時にこの二人が出ていることが面白い。
澄雄の趣向は、句集名を見るだけも良く分かる。『花眼』『鯉素』『游方』『四遠』『白小』などほとんどが中国や仏教の故事から採られている。ちなみに『花眼』は老眼のこと。花の美しさが分かる年齢になったと言うことらしい。『鯉素』は手紙。鯉の中から素に書かれた手紙が発見された故事から採られている。「素」は白絹。うーん難しい。句集名の解説だけで第一回が終わってしまう。文末に句集一覧を付けたので、興味がある方は調べてみて欲しい。
仏教的な素養は澄雄の一部でしかないが、句風の格式の高さや立ち姿の正しさは、俳壇の大いなる求
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