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『 スポーツは文芸をどのように彩ってきたか 』

玉木正之

スポーツは文芸をどのように彩ってきたか

玉木正之

第二回 運動大好き(アスレティシャン)の正岡子規と運動嫌い(エスティシャン)の夏目漱石

「俳人兼歌人兼批評家だった正岡子規の天才」による「寫生文」は、夏目漱石の散文にも大きな影響与えた、と芥川龍之介は書いている(『文藝的な、餘りに文藝的な』より)。

その子規は、明治の初期に欧米から伝播したスポーツのなかで、野球に強く魅了された。1889(明治22)年、第一高等学校在学中に、喀血するまでは捕手としても活躍。その試合の魅力をベースボール『九首九句』のなかに見事に描写している。

まり投げて見たき広場や春の草

夏草やベースボールの人遠し

今やかの三つのベースに人満ちてそゞろに胸の打ち騒ぐかな

うちあぐるボールは高く雲に入りて又落ち来る人の手の中に

……など、子規の野球の俳句や和歌は、どれも眼前に野球を遊ぶ嬉々とした様子が立ち現れる。

球うける極秘は風の柳かな

これは、野球好きなら思わずニヤリと笑いたくなる一句だが、キャッチボールをやった経験のない人には少々わかりにくいかもしれない。要するに、ボールをグラヴでキャッチするコツは、風に吹かれるままに枝を柔らかく揺らす柳のように、飛んでくるボールに合わせてグラヴを少し引き気味に動かす、ということを、野球のプレイに精通した野球大好き人間の子規は、俳句で教えてくれているのだ(気に入らぬ風もあろうに柳かな……という仙厓の名句も思い出されます)。

子規晩年の随筆『松蘿玉液(しょうらぎょくえき)』では、球場のダイヤモンドの図まで用いて、この「方法複雑にして変化多き」故に

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