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楸邨山脈の巨人たち

北大路翼

楸邨山脈の巨人たち

北大路翼


はじめに

昨年幸運に恵まれ加藤楸邨の俳句の鑑賞文を一冊にまとめた。百句にしぼった鑑賞なのだが、いまさらながら、その句の幅の広さに驚かされた。いったい楸邨俳句の神髄はどこにあるのだろう。なんとなくわかったつもりでも、断言するのは難しい。どこか仏陀における悟りのようなもので、それ自体は存在するが、その境地にいかないと説明できない類のものなのかもしれない。中心がはっきりしなければ、輪郭をなぞるほかはあるまい。輪郭をなぞることによって相対的に中心を浮かびあがらせようというのが今回の趣旨である。楸邨俳句に当てはめてみれば、輪郭とはその周辺の人たちであり、特にはその俳句に共感した弟子たちである。幸い楸邨の系統は、楸邨山脈といわれるようにその裾野は広い。楸邨の骨太さを継いだ金子兜太、抒情性を継いだ森澄雄、松尾芭蕉につらなる古典情趣を継いだ安東次男、社会性を継いだ沢木欣一など枚挙にいとまがない。そしてかくいう愚生も今井聖を通した孫弟子である。兄弟子たちに少しでも近づけるように、彼らが何を受け継いでいたのか一人一人見ていきたい。



第一回 金子兜太(一)

兜太のイメージを覆す


楸邨の弟子といえばまずこの人が思い浮かぶ。

  彎曲し火傷し爆心地のマラソン

のように、骨太な文体や反戦における人間愛など、楸邨に通うところは大きい。人間味とでも言おうか。

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