町田康の読み解き山頭火
町田康
町田康の
読み解き山頭火
町田康
第二回「まつすぐな道でさみしい」一
小学四年か五年か、それくらいの頃、友だちの家に行くと額が飾ってあって、それに徳川家康の遺訓が書いてあった。他の子供はそんなものには興味を示さず、行軍将棋ゲームをしたり、庭に出て真空飛び膝蹴りやフジヤマタイガーブリーカーをするなどしていた。だけどルルル、ルルルールルルルル。俺はそんなものに興味を示す偏屈な子供で、そんなだから、その後、親の制止を振り切ってパンクロッカーに成り下がり、士大夫は言うに及ばず、女子供にさえ笑いものにされ、世のあらゆる辛酸を舐め尽くすことになるのだけれども、まあそれも仕方がないからいいとして、兎に角、子供の俺は、他の健全な子供と遊ばず、それを凝と眺めていた。
のだけれども、その割になにが書いてあったかを覚えていない。そんな中、一つだけ覚えているのが、
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