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Looking for 鷗外

伊藤比呂美

Looking for 鷗外

伊藤比呂美

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森鷗外が今生きていたら、Twitterで時事について熱心に発信していたのではあるまいか。そしたら瞬く間に炎上して、そのたびに相手と熾烈な論争をした。文学者であるとともに政府高官だから、ときに政治的に偏ったこともtweetし、あるいは高官としてお上に物申す的なこともtweetし、またまた炎上して論争した。そんな鷗外像は想像していなかったので、その可能性に気がついたときには驚いた。

数年前に私は『切腹考』という本を書いた。私は鷗外を読んできたが、小説の内容には興味がなかった。鷗外のふと現れる語尾の「のである」に取り憑かれて数十年、いや少し盛りました、でも少なくとも十数年、それについて考えてきた。それを解き明かしたかった。
それから鷗外の書く女が、どれも似通っているのが気になって仕方がなかった。同じ女ばっかり出てくる。ひとりの女をくり返しくり返し書いているようだ。どこからこの女ができてきたのか。妻のしげさんか母のみねさんかと思う以前に、私ではないかと思っていた。

それから切腹について考えたかった。「阿部一族」の人々の切腹、「興津おきつ弥五右衛門やごえもんの遺書」の切腹についても考えたかった。
私は熊本在住で、私の家から熊本城が見える。熊本地震の後、立て直された天守閣は、ハリボテの模造品にすぎないから、夜になるといかにも模造品らしくライトアップする。日によって赤だったり紫だったりする。その色には何かと理由があるようだ。3月には青と黄色に染められていた。古くからある貴重な石垣はまだ修復中、ひとつひとつの石にナンバーが振られて置いてある。昔、お城からまっすぐに下っていったところに藩主の館があった。その道は地震以来封鎖されて使えなくなっている。その館から南へ数百メートル行けば、阿部一族の屋敷があった。今はRKK熊本放送の建物の一角で、小さな碑が立っている。その脇の路地にだいだい書店という小さな本屋があり、私はときどき行って本を買う。そのあたりを通りかかるたびに、聞こえただろうと、私は毎回同じことを考えるのだった。藩主光尚が聞いた阿部家討ち入りの音や声を想像するのだった。

さて、今年は鷗外生誕160周年。そして没後100周年。鷗外イヤーである。それなのに、折からのコロナ禍もあり、何にもする気になれない。それでドイツに行こうと考えた。というとかっこいいが、実は、優柔不断な私の、なかなかつかない決断を決断するのが面倒臭くなって先延ばしにするという悪癖によるのだった。

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