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『 俳句で味わう、日本の暮らし 』

黛まどか

俳句で味わう、日本の暮らし

黛まどか

第七回 二百十日

立春から数えて二百十日目で、雑節の一つ。新歴では九月一日か二日頃。ちょうど稲の開花期で、台風襲来の時期と重なることから、農家では〝厄日〟として警戒してきた。また立春から二百二十日目の〝二百二十日〟も同様の意味で厄日とし、旧暦八月一日の〝八朔〟と共に、農家の三大厄日とされる。

風を鎮めるため、二百十日の前後に、風神である竜田または広瀬の神を祀って豊作を祈る〝風祭〟が行われる。風の祭祀は全国の神社や寺院、各集落の祠や家々などで広く催されるが、土地の習俗とも調和し、地域性を持つ。風を切るまじないとして、鎌を軒先や屋根の上に取り付けたり(風切り鎌)、風除けの札を田畑に立てたりする。〝風日待かざひまち〟は、人々が集まって飲食をし、神社や堂に忌籠りをする風習。富山県内には不吹堂ふかんどうや風神堂が分布する。

風害は農業にとって死活的な問題だが、一方で風は、水や太陽と同様に必須のものでもある。漁業にとっても、風はその両面性を持つ。風神の呼称〝風の三郎〟には、強風を怖れつつ順風を待ち、風と共に暮らしてきた民の息づかいが感じ取れる。

島山を い行き廻れる 川副ひの 丘辺の道ゆ 昨日こそ わが越え来しか 一夜のみ 寝たりしからに 峯の上の 桜の花は 滝の瀬ゆ 激ちて流る 君が見む その日までには 山下やまおろしの 風な吹きそと うち越えて 名に負へるもりに 風祭せな

『万葉集』巻九・一七五一

風祭を詠んだ高橋虫麻呂の長歌。難波宮に一泊して翌日平城京に帰った折の歌。

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