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『 寺子屋山頭火 』

町田康

寺子屋山頭火

町田康

第三回 家の破産、父の失踪

ここにひとつの不幸があった。というのは中也にしろ太宰にしろ、本人は文学にかまけて生活能力なく、実家にとってはごくつぶしであったが、親はまともであった。ところが山頭火(このときは種田正一)の場合、可哀想なことに親の代からボンクラであった。

どういうことかというと、男が極道をする場合、さんだら煩悩、といって飲む、打つ、買う、の三種類があるが、山頭火の父親・竹治郎は、買う、すなわち女に入れあげて金を遣いまくるタイプ、西鶴なんかに出てくる「(よね)ぐるひ」ってやつで、女に金を惜しまず、前借を払って落籍、家を買ってやるなんてことを普通にしていたらしい。

というか、これについては後で詳しく考えようと思うが、それが原因で山頭火十歳の折、母親・フサは自殺をしていて、その後、竹治郎は妾・コウを後添えとして迎えていたのである。

もちろんそういうことをしてなお、家業に精出し、家運を隆盛に導く、導いたという人ももちろんいるだろう。しかるにこの竹治郎という人は、そうした才能が皆無というか、はっきり言ってやる気もあまりなく、女と戯れるのを人生の目的に据えていたため、家は衰運に傾いていった。

このあたりの事情はまあはっきり言ってよくわからなく、大地主なのだからかなりの資産があって、普通にやっていれば

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