AmazonPayでのお支払いが可能になりました!新規会員募集中!  今すぐチェックする

『 寺子屋山頭火 』

町田康

寺子屋山頭火

せっかく東京で得た図書館の仕事もやめてしまった山頭火。安定した収入を捨てたのだから、正社員を辞してフリーターに逆戻りしたようなもの。さて、その原因は何だろうか。

町田康

第九回 図書館退職する

大正十五年四月、山頭火が、負うて負いきれない荷物を背負って行乞流転の旅に出た、その理由の一つは銭の労苦ではないのか、と考えて、スーパーマーケットの店内を流転してきたが、せっかく得た正社員というか正規職員の職を辞してしまう、安定的な立場をいともあっさりと捨ててしまうといった行動から、やはり銭以外の深甚な問題が山頭火のなかにあったのではないか、ということになったのは、まあ考えてみれば当たり前の話である。

人間がなにか行動するとき、その理由は一つではない。

それもあるがあれもある。あれもあるがこれもある。という具合に過去現在未来を貫くいろんな事柄がいろんな風に絡み合い、もつれ合って、できた模様とも言えない模様が、人間の行動パターンで、専門家はこれを称して、「人間模様」と呼ぶ(らしい)。

だから医者とか学者とかはじっきに「これが原因ですら」と言うが、それは事実(というか現実)の一端に過ぎず、それですべてが分かるわけではない。

〽おーらグズラだど、ヒヒヒッヒイ。

と歌いながら家に帰ってもらいたいものだ。そしてネットも禁止。

なんて言うのは言論封殺だ。そんなことを言って真っ先に、「おまえは黙っとけ」と言われるのはこの俺なんだよ。

ここから先をお読みいただくには
会員登録が必要です。

最新号のコンテンツ

連載 エッセイ (2020年10月号)

寺子屋山頭火

山頭火が図書館の職を辞した理由は、人間関係、それとも離婚の影響か

連載 連載詩 (2020年10月号)

最少の言葉で詩作する試み

訥々と紡ぎ出されるソネット。秋、詩人はどんな言葉を世界に放つのか

谷川俊太郎

連載 連載詩 (2020年10月号)

週末のアルペジオ

立ち止まって受け止めるメッセージ。めいめいが自分自身のものとして

三角みづ紀

連載 フォト小説 (2020年10月号)

スーパーフィッシュと老ダイバー

再び旅に出るジョージ。シーラカンスの長老に会い人間の愚かさを知る

連載 エッセイ (2020年10月号)

俳句で味わう、日本の暮らし

猪の多産にあやかり子孫繁栄や五穀豊穣を祈る亥の子。名句を鑑賞する

連載 回想記 (2020年10月号)

旅する少年

山陰、奈良、続く旅への衝動と学級新聞で向けられる地元への眼差し

連載 医学ミステリー (2020年10月号)

Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える

胃潰瘍で亡くなった漱石。神経衰弱の要因はその気質と英国留学にあり

連載 スポーツ随想録 (2020年10月号)

スポーツは文芸をどのように彩ってきたか

スポーツに愛と死を見出し言葉に換えた二人・虫明亜呂無と倉橋由美子

連載 妖異譚 (2020年10月号)

鬼ものがたり

道に迷った山中で助けてくれた老僧。ところがムチを持ち出すと……

連載 アート&エッセイ (2020年10月号)

伝統と破壊の哲学

クラスの厄介者・野田ちんに渡しそびれた、カジカの木箱の思い出とは

連載 新人デビュー小説 (2020年10月号)

愛のレシピ:23歳

きっと誕生日が来るたび思い出す。母と祖母から渡されたほろ苦い幸せ

連載 動画 (2020年10月号)

Dr.よねやまの芸脳生活

「漱石に学ぶ人脈の作り方」Dr.の必見レクチャー好評配信中

連載 動画 (2020年10月号)

町田康のパンク山頭火ラヂオ

徒然なるままに山頭火を語る町田版自由律YouTube。必見連載スタート

Web新小説会員登録はこちら