登録初月は無料!バックナンバーも読み放題!会員登録はこちら  今すぐチェックする

『 伝統と破壊の哲学 』

増田伸也

伝統と破壊の哲学 Vol.10

「なぜ僕は写真で世界を目指すのか」

増田伸也

HANAFUDA SHOUZOKU#53, 2017, Shinya Masuda

「ピンクの雪だるま」

今思えばあれが僕にとっての初恋だったのかもしれない。
増田少年が黒板と教壇の間の指定席に座るようになるもっと前の話である。
生徒たちは通常2人用の頑丈な木製机を使用することになっていた。
使い古されたその机には、歴史を物語る栄光のキズ跡が残されていた。
ニードルで意図的に掘られた穴のある机は密かに男子生徒たちの人気を博していた。消しゴムの削りカスを丸め、ゴルフと称し仲間うちで遊べるからだった。

2人用の机はバディとしての仲間意識を高めることにも一役買っていた。
2人で1冊の教科書を使用する場合には、両端を2人で持つことになり、このような共同作業が、譲り合いや相手を敬う気持ちを育んでいく。

しかし、低学年ではまだまだ修業が足りずお隣さんとの仲が悪くなってしまう例も多々あった。
こういった生徒たちは境界問題を抱えることとなる。
境界線として机の真ん中に鉛筆で濃く引かれた線があるのだが、その線から消しゴムがわずかに相手側にはみ出したりしたらもう大変。猛烈な抗議を受けることになりかねない。ときには掴み合いの大喧嘩に発展する。
いつの間にか「空中はありね。セーフ、セーフ」と机の上の空間で境界を侵し、お隣さんを挑発してくる男子もいるから紛争は絶えなかった。

さて、僕のクラスでは2学期が始まって早々に席替えが行われた。

登録初月は無料

ここから先をお読みいただくには
会員登録をお願いいたします

登録をすると、創刊号(2020年2月1日号)からのバックナンバーをすべてお読みいただけます。

最新号のコンテンツ

巻頭特別寄稿 ≪今、感じねばならぬ時≫ (2022年1月1日号)

肉の森

幼年期、番台から眺めた裸の人間。欠損した骨と肉の切断面に視たもの

特集「コロナ禍、真実が見えますか」 (2022年1月1日号)

コロナ禍、路上の「野戦病院」

貧困の現場を目撃してきた活動家が伝える、コロナ禍の切実な生の声

連載 連載詩 (2022年1月1日号)

週末のアルペジオ

昨日ではなく、明日でもない、ただこの瞬間をたくましく生きるために

三角みづ紀

連載 連載小説 (2022年1月1日号)

猛獣ども

手作り弁当から手繰られる男女。かけひきか、運命か、そして事件は?

連載 エッセイ (2022年1月1日号)

町田康の読み解き山頭火

どうしようもなさから逃れ切れない山頭火を絶句に至らしめたものは?

連載 ショートショート漫画 (2022年1月1日号)

しおり物語

いちごジャム8個? 一枚の買い物メモに妄想膨らむほっこりなお正月

連載 動画 (2022年1月1日号)

待ってました! 黙阿弥歌舞伎への招待

悪党二人が仕掛ける江戸城御金蔵破りの実録物・電脳紙芝居「四千両」

春陽堂書店Web新小説編集部

連載 エッセイ (2022年1月1日号)

兼好のつれづれ絵草紙

お目出たくてワクワクする初席。お約束の、師匠元日の一言で笑い初め

三遊亭兼好

連載 ウェブ絵巻 (2022年1月1日号)

漱石クロニクル ―絵で読む夏目漱石の生涯―

是公の勧めで満州に渡った漱石。旧友たちが次々と訪れ満韓を巡遊する

連載 俳句鑑賞 (2022年1月1日号)

楸邨山脈の巨人たち

虚子に傾倒した川崎展宏の第一回。「寒雷」では異端だった視点を鑑賞

連載 医学ミステリー (2022年1月1日号)

Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える

生来の能力の高さから若くして活躍。やがて目的を見失った芥川龍之介

連載 紀行エッセイ (2022年1月1日号)

銭湯放浪記

最終回は佃島の銭湯。震災と空襲を逃れ、江戸情緒と心意気を今に残す

連載 動画 (2022年1月1日号)

Dr.よねやまの芸脳生活

旅と作家~Dr.米山の必見YouTubeレクチャー第20弾

連載 動画 (2022年1月1日号)

町田康のパンク山頭火ラヂオ

徒然なるままに山頭火を語る町田版自由律YouTube。注目の第4回配信

(2022年1月1日号)

次号予告

特集「ウィズコロナ、もう一つの生き方」この危機を作家たちはどのように受けとめているのか?

春陽堂書店Web新小説編集部

登録初月は無料

Web新小説会員登録はこちら