コロナ禍のルーティン
森絵都
コロナ禍のルーティン
森絵都
ルーティンをこなす。
コロナ禍という未曾有の状況下で、都内在住の私が自らに課していたのはこの一事だった。
毎日やることを決めて、それをやる。一つずつ順にやっていく。そうしてルーティンを繰り返すことで一日一日を凌いでいく。
というと大袈裟に響くかもしれないけれど、日常生活という点に於いて、私はコロナによって深刻な影響を受けた人間ではない。もとより在宅ワークを常とする作家は、むしろ最も影響を受けなかった業種の一つではないかと思っている(その代わり、小説への影響は深刻ですが)。
ではなぜルーティンがどうのと言っているのかというと、パンデミックの真っ只中に、飼い犬が死んでしまった。異様に元気な十八歳だったのが、急にがくっと弱って、帰らぬ犬となった。その一年半前にもう一頭いた犬を亡くしたばかりだった私にとって、寿命とはいえ、二頭目の死は大きな打撃となった。
ペットの死。その喪失感はなかなか手強い。長年、犬と共に暮らしてきた家に、その犬がいない。人間しかいない。
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