『 兼好のつれづれ絵草紙 』
三遊亭兼好
兼好のつれづれ絵草紙
三遊亭兼好
其ノ三 「咄家の、口の利きよう」
丁寧な言葉を使おうとすると、かえって失礼な言葉遣いになることがある。
咄家は言葉を扱う商売。加えて、上下関係が厳しいので、相手に合わせて言葉遣いを変えるのは得意だろう、と思われるがそうでもない。いつでも慇懃無礼な話し方になる人もいるし、誰にでも乱暴な口を利く奴もいる。
私は普段はそうでもないが、緊張すると丁寧に話せなくなる質だ。大物師匠や怖い先輩など「この人だけはしくじっちゃいけない」という人に限って無礼な口を利いてしまう、悲しい男である。
「お前は先輩に対してまともな話し方が出来ねぇのか」とよく小言を食らうのだが、私から言わせれば「失礼な言葉遣いになるのは、あなたを尊敬している証拠ですよ」という思いなのだ。勿論相手には通じない。
だから私は先輩師匠方から「キラキラした尊敬の眼差しで近づいて来て、失礼なことを言って去っていく変な男」
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