登録初月は無料、バックナンバー【作家58人、連載回数416回】も読み放題! 会員登録はこちら  今すぐチェックする

  • ホーム
  • バックナンバー
  • 漱石クロニクル ―絵で読む夏目漱石の生涯― 第十五回 絵を観る、絵を描く―芸術は自己の表現に始つて、自己の表現に終るものである 

漱石クロニクル ―絵で読む夏目漱石の生涯―

大高郁子

漱石クロニクル

  ―絵で読む夏目漱石の生涯―

大高郁子

第十五回 絵を観る、絵を描く―芸術は自己の表現に始つて、自己の表現に終るものである

明治四十五年/大正元年(一九一二年)四十五歳

 一月一日、東京朝日新聞に『彼岸過迄』の序として、「彼岸過迄に就て」が掲載される。
「彼岸過迄に就て」より
《自分は自然派の作家でもなければ象徴派の作家でもない。近頃しば〳耳にするネオ浪漫派の作家では猶更ない。(中略)たゞ自分は自分であるといふ信念を持つてゐる。(中略)たゞ自分らしいものが書きたいだけである。手腕が足りなくて自分以下のものが出来たり、衒気げんきがあつて自分以上を装ふ様なものが出来たりして、読者に済まない結果をもたらすのを恐れる丈である。
 東京大阪を通じて計算すると、わが朝日新聞の購読者は実に何十万といふ多数にのぼつてゐる。(中略)其の何人かの大部分は恐らく文壇の裏通りも露路も覗いた経験はあるまい。全くただの人間として大自然の空気を真率しんそつに呼吸しつゝ穏当に生息してゐる丈だらうと思ふ。自分は是等の教育あるかつ尋常なる士人しじんの前にわが作物を公にし得る自分を幸福と信じてゐる。》
 一月二日より、「東京朝日新聞」と「大阪朝日新聞」に『彼岸過迄』の連載が始まる。(四月二十九日まで)

 一月二十一日、池辺三山の母、世喜子せきこが死去(六十八歳)する。
 二月二十八日、池辺三山が心臓病で死去する。四十九歳。母、世喜子の三十五日忌の三日後だった。
 三月一日、漱石は「東京朝日新聞」に「三山居士」を書く。
「三山居士」より
《余が最後に池辺君を見たのは、その母堂の葬儀の日であつた。(中略)其時池辺君が帽を被らずに、草履ぞうりまゝ質素な服装なりをして柩のあとに続いた姿を今見る様に覚えてゐる。余は生きた池辺君の最後の記念として其姿を永久に深く頭の奥に仕舞つて置かなければならなくなつたかと思ふと、其時言葉を交はさなかつたのが、甚だ名残惜しくてならない。》

 三月二日、ひな子の誕生日に『彼岸過迄』の「雨の降る日」を書き始める。
 三月七日、ひな子の百か日に「雨の降る日」を脱稿する。ひな子の供養になったと喜ぶ。

登録初月は無料

ここから先をお読みいただくには
会員登録をお願いいたします

登録をすると、創刊号(2020年2月1日号)からのバックナンバーをすべてお読みいただけます。

最新号のコンテンツ

特集「この作家を読もう ──新刊を撃て!」 (2022年6月1日号)

逢坂冬馬氏インタビュー

侵略戦争の過去と現在などを『同志少女よ、敵を撃て』の著者は語る

連載 (2022年6月1日号)

Looking for 鷗外

紆余曲折の末ベルリンへ。未知なる鷗外との邂逅を綴る新連載スタート

伊藤比呂美

連載 書き下ろし連作小説 (2022年6月1日号)

藤沢周・連作小説館⑦ 言問

樹々からのいきれに蘇る父との記憶。これは過去なのか、現在なのか

連載 連載小説 (2022年6月1日号)

猛獣ども

山の中で醸成される噓と絶望。助けを求めて繰り返される、空しい賭け

連載 エッセイ (2022年6月1日号)

町田康の読み解き山頭火

行乞の矛盾と生存の問題に苦しむ山頭火は、草庵に定住することを願う

連載 俳句エッセイ (2022年6月1日号)

アマネク ハイク

鈴木真砂女ゆかりの小料理屋の思い出から「切れ」の魅力を解き明かす

連載 エッセイ (2022年6月1日号)

兼好のつれづれ絵草紙

雨の中会いに来た友を目で追う隠居。「碁敵は憎さも憎し懐かしし」

三遊亭兼好

連載 ウェブ絵巻 (2022年6月1日号)

漱石クロニクル ―絵で読む夏目漱石の生涯―

京都旅行を楽しむも体調は悪化。漱石山房にて、若い門下生らと過ごす

連載 俳句鑑賞 (2022年6月1日号)

楸邨山脈の巨人たち

旅情あふれる沖縄の景色から妻との思い出まで、静かで深い欣一の世界

連載 医学ミステリー (2022年6月1日号)

Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える

最終回は生涯現役の武者小路実篤。大往生は肯定的な生き方の賜物か

連載 エッセイ (2022年6月1日号)

江戸の愛猫

江戸の夏の風物詩、隅田川の夕涼み。猫が舟に乗った団扇絵の秘密とは

連載 猫エッセイ (2022年6月1日号)

Q&A今月の猫じゃらし

突然、飼い猫が手にがぶっと噛みついた! こりゃ一大事と思ったが

連載 動画 (2022年6月1日号)

Dr.よねやまの芸脳生活

「まとめ!明治の芸術家たちの生き様」~Dr.米山のYouTube最終回

連載 動画 (2022年6月1日号)

町田康のパンク山頭火ラヂオ

徒然なるままに山頭火を語る町田版自由律YouTube。注目の第4回配信

バックナンバー (2022年6月1日号)

歌舞伎役者.坂東彦三郎朗読動画バックナンバーの部屋

坂東彦三郎が朗読。河竹黙阿弥の歌舞伎狂言12選 絵は辻和子

春陽堂書店Web新小説編集部

バックナンバー (2022年6月1日号)

岡もみじショートショート漫画バックナンバーの部屋

妄想膨らむ楽しい「しおり物語」の世界へようこそ! 全6回一気読み

編集後記 (2022年6月1日号)

気まぐれ編集後記

筆のさえが際立つ「寺子屋山頭火」。会員登録で繰り返し味わえる喜び

春陽堂書店Web新小説編集部

登録初月は無料

Web新小説会員登録はこちら