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『 愛のレシピ:23歳 』

下平咲

愛のレシピ・・23

下平咲

おさちのトマト鍋

「人が作ってくれるご飯ほど美味しいものはないよ」

これはよくおばあちゃんが言っていた言葉だ。
そのころ中学生だった私には、彼女のこの言葉がいまいちピンとこなかった。

毎日自炊をする様になってからも、その言葉を理解できずにいた。
自分の食べたいものを、自分の好きなように味付けをして作ったものが、
一番美味しいに決まっていると思っていたからだ。

料理に使う調味料にまで多くのこだわりがある私にとって、
自分以外の人が作った、何が使われているか知ることが出来ないもの、というものがどうも苦手だった。
それはきっと高校生の時に患った摂食障害の名残でもあると思う。
人が作ってくれたものを心から感謝して食べることが出来ない、
安心できずに不安になってしまう自分の心がコンプレックスだった。

そんな私の元に、ニュージーランドから帰ってきてすぐ、
ミュージックビデオの仕事の話が舞い込んできた。

東京で住む家を探しつつ、その仕事をすることになった。
家が見つかるまでキャリーケース一つ転がしながら、
泊まらせてくれる友だちの家やホテルを転々としていた。

1ヶ月で点描を使ったミュージックビデオを作らなければいけない。
今まで私が真面目に絵を描き続けてきた成果を、やっと一つの形にすることができる。
大学で思い悩んだことが無駄ではなかったと、過去の自分にやっと言ってあげられる。
良いものを作らなきゃ。後悔しないものを必ず作り上げなきゃ。

帰国してホッとする時間も無く、目の前のことに気を奮い立たせた。

帰国したその日に、ホテルで1年ぶりに会ったおばあちゃんは痩せ細り、腰は曲がっていた。

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