江戸の愛猫
宮川匡司
江戸の愛猫 歌川国芳(一)
宮川匡司
猫好き、ここに極まれり
近年の愛猫ブームは、衰えることを知らない。書店には猫を撮影した写真集がずらりと並び、ユーチューブには、猫が主役の動画があふれかえっている。「今ほど猫への愛好が高まった時代は、かつてなかったのではないか」。そう思う方もいるだろう。
しかし、ちょっと待ってほしい。今から二百年近く前の江戸時代後期にも、猫が庶民に大変愛好された時代があった。その証拠が、猫を描いた浮世絵の数々だ。とりわけ、歌川国芳(1797~1861)は、猫好きの浮世絵師としてつとに知られる。国芳は、猫と人との深い結びつきを、驚くほど多彩に描いた。この絵師の猫絵の世界に分け入って、猫と江戸っ子との親密な関わりを感じとってみよう。
歌川国芳「鼠よけの猫」
(天保13年=1842年ごろ、大判錦絵、東京国立博物館蔵)
ColBase https://colbase.nich.go.jp/
この白と黒のブチの猫は、何をしているのだろう。赤い首輪の上にある顔は、右上方を鋭くにらみ、両耳をピンと立てている。
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