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旅する少年

黒川創

旅する少年

黒川創

2 寂しさに負けながら

小学校六年の冬が近づいた。このころには、SL仲間の同級生たちとはやや離れたところで、毎日、一人で長期の旅行計画づくりに没頭するようになった。

SL好きの友人たちの興味の中心は、「蒸気機関車」という乗り物それ自体にあったろう。私も、そこに強く惹かれていたのは確かなのだ。けれど、自分のなかでは、どこか、それさえ、一つの名分としているところも感じていた。要するに、鉄道の全国的なディーゼル化・電化の波に押されて消えつつある「SL」の撮影という目的を実行することで、「旅」を続けていたい、という気持ちだった。「SL」は好きなのだが、むしろ、私の主眼は「旅」のほうに移っていた。だが、旅を続けるための旅、というのは、誰にとっても理解しがたい。ひとまずは、大好きなSLを追いかけるため、と明確な目的を掲げるほうが、他人に対してだけではなく、自分にとっても、この行動に輪郭が与えられる、といったところだろうか。

友人たちの家庭にも、それぞれの事情や、教育方針の違いがあったはずである。私の家庭は、両親の夫婦仲が不安定とはいえ、地方公務員で共稼ぎの中産階層である。私が育った地域では、もっと年収の低い家庭のほうが、ずっと多かっただろう。それに、まだ小学生なのだ。自由に旅をすればいい、などと言ってもらえる家庭があるはずもない。

私自身の関心も、自分「一人」で旅をする、という冒険心に向かうようになっていた。そうした旅を思い描くと、寂しくもある。だが、未知の土地へと出向いていきたいという魅惑のほうが、それよりずっと強かった。

大判の時刻表と、ノートが一冊、いつも手もとにあった。

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