乱歩30巻、安吾6巻が読み放題!新サービス「会員限定閲覧ルーム」開始!  今すぐチェックする

『 文芸放談 オカタケ走る! 』

岡崎武志

文芸放談 オカタケ走る!
第2回ゲスト 作家 奥泉光さん

岡崎武志

奥泉光に聞く 漱石探求の果てしない愉しみ ~その3~

芥川賞作家・奥泉光さんにお聞きする文芸放談もついに最終回。夏目漱石の描く女性像とは? もし漱石が長生きしていたら? 好奇心の赴くままに分け入る漱石の世界。作家とその作中人物がイキイキと動き出す、興味の尽きない対談をご堪能あれ!

撮影:隈部周作 取材協力:つばめさぼう

奥泉光(おくいずみ・ひかる)

作家、近畿大学文芸学部教授。1956年山形県生まれ。1986年『地の鳥天の魚群』でデビュー。1993年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞・瞠目反文学賞、1994年『石の来歴』で芥川賞を受賞。その他、2014年『東京自叙伝』で谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。2012年より芥川賞選考委員。主な著作に『神器 軍艦「橿原」殺人事件』『シューマンの指』『雪の階』『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』など

『「吾輩は猫である」殺人事件』『夏目漱石、読んじゃえば?』『坊ちゃん忍者幕末見聞録』など、夏目漱石をテーマに据えた作品を数多く発表している。いとうせいこうとの共著『漱石漫談』をはじめとする『文芸漫談』も充実

岡崎武志(おかざき・たけし)

文筆家、書評家。1957年大阪府枚方市生まれ。高校の国語講師、出版社勤務を経て文筆家に。「神保町系ライター」「文庫王」「均一小僧」などの異名でも知られる。『読書の腕前』『女子の古本屋』『上京する文學』『ここが私の東京』『古本道入門』『人生散歩術』など著書多数。近著に『これからはソファーに寝ころんで』『明日咲く言葉の種をまこう』ほか

漱石の入口はこれがおすすめ

漱石の作品の中で、必ずしも『こころ』は出来のいい作品とは言えない。教科書に『こころ』は載せなくてもいいんじゃないかと、僕は思いますね。

奥泉さんは、本来なら何を載せるべきだと思いますか。

『吾輩は猫である』がいいと思いますね。『坊ちゃん』でもいい。

『坊ちゃん』は中学校の教科書に割と採択されていますね。

『草枕』はちょっと言葉が難しい。載るとしてもだいたい冒頭になっちゃうんですよね。『草枕』は芸術論的な思弁が大きな要素になっていて、あそこは思弁の部分。ほかにもっといいところがあると思う。

那美さんが温泉に裸で入ってくるところとか。床屋で荒っぽく頭をごしごしやられるシーンもいい。

あ、いいんじゃないですか(笑)。

でも、あの冒頭を覚えてる人は非常に多いですよね。あまり教養がない人でもね。

「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹差せば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」。有名ですからね。

いまの現代小説で、冒頭部が暗誦されている、ってちょっと考えにくいです。

そうですね。でも、有名な冒頭のせいで、『草枕』はああいう小説だっていうイメージがついちゃった。理屈っぽい、っていうかね。かならずしもそういう小説じゃないんだけど。

『草枕』はピアニストのグレン・グールドが好きだっていう話ですが。

グールドはね、割と読んでいたって言われてます。もちろん翻訳でですね。

もし英語ができれば、英語の翻訳で読んだ方が、もっとすんなり分かるかもしれない。『源氏物語』をA・ウェイリーの英訳で、正宗白鳥が読んだ話がありますね。

そうかもしれませんね。『草枕』が難しいのはしかし、意図的なものです。意図して難解な言葉を使っている。積極的に漢語を導入したりしている。すんなりとは読めないようになっている。

司馬遼太郎は講演の中で『草枕』について「全編、漱石のちょっと無意味な、装飾的な哲学ふうの小説であり、読んだからためになりますということでもない。遊びの哲学であり、一種の美文であります」と言っている。

ここから先をお読みいただくには
会員登録が必要です。

最新号のコンテンツ

連載 エッセイ (2020年9月号)

寺子屋山頭火

山頭火を行乞流転に導いたのは、一所に安住できないという宿痾だった

連載 連載詩 (2020年9月号)

最少の言葉で詩作する試み

詩人は言葉にどんな瞬間を吹き込むのか? 待望の新シリーズスタート

谷川俊太郎

連載 連載詩 (2020年9月号)

週末のアルペジオ

耳をそばだて、心を澄ます。不穏な日々と向き合う、きみからの福音

三角みづ紀

連載 フォト小説 (2020年9月号)

スーパーフィッシュと老ダイバー

再起を決意したジョージにハンスはスピードを上げる方法を伝授する

連載 エッセイ (2020年9月号)

俳句で味わう、日本の暮らし

十日十夜、浄土宗では不断の念仏を唱える。満ちていく月と心を味わう

連載 回想記 (2020年9月号)

旅する少年

時刻表と周遊券を頼りに旅する中学生。ついに北海道に足を踏み入れる

連載 医学ミステリー (2020年9月号)

Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える

スペイン風邪のもう一人の犠牲者・松井須磨子の世界を駆け抜けた人生

連載 スポーツ随想録 (2020年9月号)

スポーツは文芸をどのように彩ってきたか

スポーツ選手の純愛とスポーツ自体のエロス。二作品が辿る数奇な評価

連載 妖異譚 (2020年9月号)

鬼ものがたり

腫物に効くという男児の肝臓を求める、鬼も驚き呆れる恐ろしい男の話

連載 アート&エッセイ (2020年9月号)

伝統と破壊の哲学

ザリガニトリポイントはオンドリャ沼。ヒーローになるべく向かったが

連載 新人デビュー小説 (2020年9月号)

愛のレシピ:23歳

16年ぶりに会う父との噛み合わない会話。悪魔的な焼肉の味に思うこと

連載 英国レポート (2020年9月号)

アーツ&クラフツ、娘の仕事 メイ・モリスという才能

晩年に寄り添う一人の女性とは? 熱情と共にあったメイの生涯最終回

連載 動画 (2020年9月号)

玉木正之のWeeklyスポーツ萬歳

スポーツの魅力を超絶説法で解説。お見逃しなくご存知玉木先生動画

連載 動画 (2020年9月号)

Dr.よねやまの芸脳生活

「脳科学から考える漱石流文章の書き方」Dr.の必見レクチャー好評配信中

連載 動画 (2020年9月号)

町田康のパンク山頭火ラヂオ

放浪の俳人・種田山頭火について語るスペシャルプログラム

Web新小説会員登録はこちら