藤沢周・連作小説館⑧ 帰途
藤沢周
藤沢周・連作小説館⑧
帰途
藤沢周
花立にあふれるほどたっぷりと水を入れて、仏花を静かに挿し入れた。
水がきらめきながら零れて、波紋を浮かべながら石を伝っていく。
黄色や白い菊の花々よりもひときわ大きな百合の花が、甘くきついにおいを放って、香炉からくゆる線香の香と混じり合った。
桶から柄杓ですくった水を何度もかけた墓石は、しっとりと濡れてはいるが、強い日射しですぐにも斑に
登録初月は無料
ここから先をお読みいただくには
会員登録をお願いいたします
登録をすると、創刊号(2020年2月1日号)からのバックナンバーをすべてお読みいただけます。