岡本行夫「スーパーフィッシュと老ダイバー」希望と感動の最終回  今すぐチェックする

『 寺子屋山頭火 』

町田康

寺子屋山頭火

町田康

第七回 奇蹟は銭にならぬ

ということで自分自身を句の境地と一体化させ、自らを高めることによって句が高まる、句が高まることによって自分自身が高まる、と考える山頭火はセメント試験場で働くなどした。

しかしセメント試験場で働くことが必ずしも自分を高めることにならないのは前に見たとおりである。

山頭火はそこをやめた。しかしながら都会というところは、ただ息をしているだけでカネのかかるところで、しかも身より頼りがほとんどないとなると、銭稼ぎをしないということ乃ち死ぬるということ、なにをしても金を稼がなければならない。

おそらく山頭火の理想は、物書きとして一戸を構える、ということだっただろうが、それをするためにもこのような苦が必要だ、と山頭火は考えたのであった。

しかしその苦しみと目指す高み、生活と芸術があまりにもかけ離れていた。

銭を稼ぐために心身をすり減らし、そのため句作ができぬということはできぬ。発想の入り口と出口、原因と結果を取り違えた結果がここに現れていた。

ならば。銭を稼ぐために使っていた労力を多少減じ、句作の方にその力を回したい、と思うのが人情で、山頭火もそのようにした。

では銭を稼ぐための労力を減らすためにはどうしたらよいか。

まあ、ひとつの方法としては行財政改革というか、緊縮財政というか、遣う銭を減らす、という

ここから先をお読みいただくには
会員登録が必要です。

最新号のコンテンツ

連載 連載詩 (2021年1月号)

最少の言葉で詩作する試み

自然は語らない、ヒトは混沌にいる。最少の言葉で詩人は今を紡ぎ出す

谷川俊太郎

連載 フォト小説 (2021年1月号)

スーパーフィッシュと老ダイバー

ジョージとハンスはそれぞれの新世界へ。希望と願いに満ちた最終回

連載 連載詩 (2021年1月号)

週末のアルペジオ

温もりが胸に落ち、隅々まで染みていく。目覚めた朝へ踏み出すために

三角みづ紀

連載 エッセイ (2021年1月号)

寺子屋山頭火

近親者の死と銭の苦しみ、不安定な精神を抱える山頭火を大震災が襲う

連載 イラスト評伝 (2021年1月号)

エピソードで知る種田山頭火

母親と弟の自殺、実家破産。山頭火を見舞う悲劇の連鎖が句作の源泉に

春陽堂書店編集部

連載 エッセイ (2021年1月号)

俳句で味わう、日本の暮らし

節分は旧暦新年・立春の前日。豆撒で邪鬼を祓う情感豊かな名句を鑑賞

連載 回想記 (2021年1月号)

旅する少年

キャロル、ほんやら洞、わいせつ裁判、思春期とSLラストラン撮影行

連載 医学ミステリー (2021年1月号)

Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える

19歳で医学部を卒業した早熟の天才・森鷗外のエリートならではの苦悩

連載 動画&エッセイ (2021年1月号)

假屋崎省吾の絶品紀行~日々を華麗に彩る~

素材により表情が異なる花器。自由な発想で向き合うのがカーリィ―流

假屋崎省吾

連載 スポーツ随想録 (2021年1月号)

スポーツは文芸をどのように彩ってきたか

国の理想が揺らぐ時代の破天荒小説・ロス『素晴らしいアメリカ野球』

連載 妖異譚 (2021年1月号)

鬼ものがたり

燭台の灯りに浮かんだ小中将君。それは亡くなる直前の美しいまぼろし

連載 アート&エッセイ (2021年1月号)

伝統と破壊の哲学

トンボが水面に卵を産むように、僕は世界に自分の作品を産みつける

連載 新人デビュー小説 (2021年1月号)

愛のレシピ:23歳

たくさんの出会いと別れ、愛が育んだ味。私をつくった23年分のレシピ

連載 動画 (2021年1月号)

Dr.よねやまの芸脳生活

「森鷗外の生き方にみる医学界の学閥」Dr.の必見YouTube好評配信中

連載 動画 (2021年1月号)

町田康のパンク山頭火ラヂオ

徒然なるままに山頭火を語る町田版自由律YouTube。注目の第2回配信

Web新小説会員登録はこちら