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『 伝統と破壊の哲学 』

増田伸也

伝統と破壊の哲学 Vol.6

「なぜ僕は写真で世界を目指すのか」

増田伸也

HANAFUDA SHOUZOKU#6, 2017, Shinya Masuda

「ミドリのジャージ」

僕たちの小学校では、4年生に上がると部活動に参加することができる。
全ての部の中で野球部は小学生男子の憧れの的だ。

サッカーもまだ普及していない当時、国民的スポーツといえば野球であり、子供たちにとってそれは一番身近な遊びだった。
放課後はグローブとバットを担いで公園で待っていれば、近所の子供たちが次々と集まってくる。
石やチョークで線を引いたら特設スタジアムの出来上がり。
「グー」と「パー」でチーム分けができたら、さあプレイボールだ。
アウトかセーフの微妙な判定に抗議して喧嘩になったり、チームメイトとの友情が芽生えたり、色んな青春物語がこの界隈でも繰り広げられた。
それはまだテレビゲームもスマートフォンもない時代のごくありふれた光景だった。

登校時に見かける野球部の男子は、純白のTのワッペンのついた緑色の野球帽を被り、白の3本線の入った紺色のジャージをはき、手提げカバンからチラリと野球グローブを覗かせていた。
彼らの野球帽は入部が認められるともれなく配布されるもので、僕らにとってそれを被っている部員たちは特別な特権を与えられたヒーローのような存在だった。
ちなみに、僕も含め野球部でない生徒は皆、中日ドラゴンズの選手の背番号のイラスト入り野球帽を被っていた。

やっと部活動を許される4年生となった僕たちは、こぞって野球部を希望した。
なぜなら、ヒーローへの近道が約束されるからだ。
しかし仮入部の初日、ほとんどのクラスメイトがその近道をあっさりあきらめることとなる。
その日校庭で見た野球は想像だにしないものであった。

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