猛獣ども

井上荒野

猛獣ども

井上荒野

13

小松原慎一

慎一は再び、十日前のことを考えはじめた。

七帆の恋人だった男が突然あらわれた日。終業時間が来て、いったん事務所を出ていった七帆は、しばらくして戻ってきたのだった。

事務所のドアに、慎一は習慣的に鍵をかけていた。ドアはまず外側から勢いよく引かれ、鍵がかかっているとわかると、七帆はドンドンとドアを叩いた。管理人のひとりとして、合鍵は持っているはずだったのに。慎一がドアを――その時点で外にいるのは七帆だとなぜか確信していたのだが、それでも、というかだからこそ恐る恐る――開けると、七帆はぽかんと

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春陽堂書店Web新小説編集部

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2023年1月1日号 【特集】笑いとはなんだ! 人類を救うもの 玉川奈々福 茂山逸平 立川談慶 坪内稔典

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2023年2月1日号 【特集】「猫の俳句のコンテスト」発表 選考・神野紗希(俳句)、増田伸也(写真)

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【連載】エッセイ

実力者揃いの作家たち。独自の視点が光る諸玉の創作を掲載。

春陽堂書店Web新小説編集部

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【連載】詩歌

最先端を疾走する詩人の魂とは何か。これがこころに届く現代のポエムだ。

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【連載】小説

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【連載】ムービー

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【連載】漫画

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