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『 寺子屋山頭火 』

町田康

寺子屋山頭火

出家得度を果たした山頭火。ほどなく味取観音堂守となって、托鉢と鐘を撞く日々に心の平安を得たようだ。

町田康

第十六回 堂守のマージン

大正十四年二月、前年の終わりより、報恩寺で坊さんの真似事をしていた山頭火は、いよいよマジの出家をして耕畝こうほという名を貰った。

名前を貰っただけでなく、入る寺も世話をして貰った。

といって立派なお寺の住職に納まったわけではなく、味取みとり観音堂という小さなお堂の堂守になったのである。

味取観音堂は報恩寺の末寺で、その名の通り味取というところにあった。

肥後の片田舎なる味取観音堂守となつたが、それはまことに山林独住の、しづかといへばしづかな、さびしいと思へばさびしい生活であつた。

というのは「鉢の子」という後(昭和七年)に刊行した第一句集の一番最初の句の前書きである。そしてその一番最初の句が、

松はみな枝垂れて南無観世音

なのである。って書いて俺は説明が下手だとつくづく思う。もっとすっきり書けないものかと思う。と思い、書き直すことは文章ならできる。

でも人生はどうであらう。俺はいま下手を打ったなと思ったところでやり直すことはできない。ただ心のなかに悔恨だけが積み重なり、それが発酵して、未来にあるはずの希望を蝕み、絶望に変える。

だから飲むのさ。お酒を飲むさ。だから打つのさ。スロットを打つのさ。てなことがまた下手を打っていることなのだけれども、〽わかっちゃいるけどやめられね、というのが男の人生なのである。

しかし。山頭火はそれをリセットした。多くの人はそれができない。なぜならリセットボタンを押すということは

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