乱歩30巻、安吾6巻が読み放題!新サービス「会員限定閲覧ルーム」開始!  今すぐチェックする

『 俳句で味わう、日本の暮らし 』

黛まどか

俳句で味わう、日本の暮らし

黛まどか

第三回 八十八夜

立春から数えて八十八日目、新暦の五月二、三日頃に当たる。八十八夜を過ぎれば朝の冷え込みも弱まり霜も降りなくなるため、農家では種まきや茶摘み、養蚕などの目安にしてきた。また、〝米〟という字が〝八十八〟に通ずるため、稲作では縁起をかついで苗床に種を播くのに適した日とする。重要な農事の基準となる八十八夜は日本で生まれた「雑節」の一つで、暦には明暦二年(一六五七)から記入されるようになった。かつてはこの日、粥を炊いて田の神に祀るなどの神事をする地域もあった。

花過てよし野出る日や別れ霜

高井几董

〝八十八夜の別れ霜〟〝八十八夜の忘れ霜〟という言葉の通り、八十八夜は霜が降りる最後の頃。ちなみに終霜の平均は、盛岡市で五月三日、青森市で四月二十七日だそうだ。稀に立夏を過ぎてから霜が降ることがあるが、この晩霜は農作物に甚大な被害を及ぼすため〝九十九夜の泣き霜〟と恐れられている。

几董は京都生まれの俳人で、与謝蕪村の高弟。吉野にしばらく滞在し花見を楽しんだのだろう。花時も過ぎ、吉野を去ろうという日の朝に名残の霜が降りた。吉野は多くの詠み人が歌を残した桜の名所であると同時に、

ここから先をお読みいただくには
会員登録が必要です。

最新号のコンテンツ

連載 エッセイ (2020年9月号)

寺子屋山頭火

山頭火を行乞流転に導いたのは、一所に安住できないという宿痾だった

連載 (2020年9月号)

最少の言葉で詩作する試み

詩人は言葉にどんな瞬間を吹き込むのか? 待望の新シリーズスタート

谷川俊太郎

連載 連載詩 (2020年9月号)

週末のアルペジオ

耳をそばだて、心を澄ます。不穏な日々と向き合う、きみからの福音

三角みづ紀

連載 フォト小説 (2020年9月号)

スーパーフィッシュと老ダイバー

再起を決意したジョージにハンスはスピードを上げる方法を伝授する

連載 エッセイ (2020年9月号)

俳句で味わう、日本の暮らし

十日十夜、浄土宗では不断の念仏を唱える。満ちていく月と心を味わう

連載 回想記 (2020年9月号)

旅する少年

時刻表と周遊券を頼りに旅する中学生。ついに北海道に足を踏み入れる

連載 医学ミステリー (2020年9月号)

Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える

スペイン風邪のもう一人の犠牲者・松井須磨子の世界を駆け抜けた人生

連載 スポーツ随想録 (2020年9月号)

スポーツは文芸をどのように彩ってきたか

スポーツ選手の純愛とスポーツ自体のエロス。二作品が辿る数奇な評価

連載 妖異譚 (2020年9月号)

鬼ものがたり

腫物に効くという男児の肝臓を求める、鬼も驚き呆れる恐ろしい男の話

連載 アート&エッセイ (2020年9月号)

伝統と破壊の哲学

ザリガニトリポイントはオンドリャ沼。ヒーローになるべく向かったが

連載 新人デビュー小説 (2020年9月号)

愛のレシピ:23歳

16年ぶりに会う父との噛み合わない会話。悪魔的な焼肉の味に思うこと

連載 英国レポート (2020年9月号)

アーツ&クラフツ、娘の仕事 メイ・モリスという才能

晩年に寄り添う一人の女性とは? 熱情と共にあったメイの生涯最終回

連載 動画 (2020年9月号)

玉木正之のWeeklyスポーツ萬歳

スポーツの魅力を超絶説法で解説。お見逃しなくご存知玉木先生動画

連載 動画 (2020年9月号)

Dr.よねやまの芸脳生活

「脳科学から考える漱石流文章の書き方」Dr.の必見レクチャー好評配信中

連載 動画 (2020年9月号)

町田康のパンク山頭火ラヂオ

放浪の俳人・種田山頭火について語るスペシャルプログラム

Web新小説会員登録はこちら