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『 もしもの日本史・創作シリーズ 光秀と藤孝 』

菊池道人

もしもの日本史・創作シリーズ

菊池道人

光秀と藤孝 第二回

妙覚寺に宿泊していた信忠は、明智光忠の軍勢が押し寄せて来るや、近くの二条城へ立てこもった。より堅固な要塞に逃れたのであるが、程なく父信長の訃報が届く。

城内にいた誠仁親王ら皇族を禁中に避難させ、猪子兵助、福富平左衛門、野々村三十郎らが奮戦する。

さすがに本格的な城塞であったので、そうたやすくは落城せず、寄せ手の大将である光忠が弾丸で負傷する程であった。

しかし、すでに本能寺の信長を討ち果たした明智軍は新たに四王天政孝が三百余騎を率いて加勢した。

二条城に立てこもるのは五百人余り。

信長の弟の津田又十郎や京都所司代として行政に敏腕をふるった村井貞勝、桶狭間の戦いで今川義元の首を取った毛利新助ら四百三十人余りが討ち死にを遂げた。

信忠も燃えさかる城内で自害した。享年二十五歳であった。

信長、信忠父子を討ち果たした光秀は、その日、六月二日のうちに、近江(滋賀県)へと向かう。自身の本拠地を固める必要があったからである。

曇り空の下、洛外へ出て、山科付近に馬脚を進める光秀の胸中では、本能寺へ向かっていた時の高揚感はすでに静まっていた。その代わりに、信長の在りし日の姿が蘇る。そしてそれはなぜか肯定的な思いを伴うものである。

美濃国に生まれ、義理の叔父である斎藤道三に仕えていた光秀は、隣国・尾張(愛知県)の若き日の信長の風評は耳にしていた。

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